世界は僕を手放した | ナノ





男は笑みを溢しながら携帯の画面を覗き込む。臨也はバイブに翻弄され身体を震わせながらも必死に男に向け手を伸ばした。それは、平和島静雄の名前を掴むように。


「しず、ちゃ、っ!」


だが男はギリギリ臨也の伸ばした手が届かない場所へと携帯を投げ、臨也は身を捩る。男は大股でベッドへと歩み寄り、腰かけると後孔にあるバイブに手を添え、ピストン運動をするかのように動かし始めた。


「ひぁあっ、や、だっ、…んぁっ、ああっ!」


ぐちゅぐちゅと激しく抜き差しを繰りかえされ、伸ばした手はシーツを握ってしまう。けたたましく鳴る着信音はすぐそこだというのに、身体は快楽を確実に拾っていく。臨也は頭をシーツへと埋め、もがいた。


「電話に出て、平和島静雄に助けを求めてもいいよ? でも俺は死にたくはないから、臨也が電話に手をかけた瞬間に…俺は臨也に酷い事をしてしまうかもしれない。」


汗でへばりついた髪など気にせず臨也は下唇を噛み、快楽に耐えながら必死に顔をあげる。手を伸ばして携帯へと向け、一言、来て、そう言えば静雄なら来てくれる。臨也は涙を貯めながら手を伸ばした。その時、


着信音が、切れた。


ヒュッと息がつまり、絶望と共に弱々しく臨也の掌はシーツへと沈んだ。嗚咽の混じった声が込み上げる。


「…残念、だったね。」


可哀想な臨也。男は呟きながら臨也の頭を撫でた。


(しずちゃん、しずちゃん、しず、ちゃん、しずちゃん!)
「…もう、や、だぁ、!」


胸が張り裂けそうな程に痛む。希望は潰えたに等しかった。
男は携帯を拾い上げ、残念そうにため息をつく。すると壁を目掛けて携帯を投げつけた。


「…もう平和島静雄なんて、忘れちゃえばいいんだよ。」


ガシャンッと激しい音を立て床へ無惨な姿で散りばめられた携帯は、もう二度と鳴りはしないだろう。部屋には時計の時間の刻む音と、臨也の嗚咽だけが響いていた。
男は優しい手つきで臨也の背中から下部にかけてをなぞり、舌を這わせてはキスを落としていく。小さく反応する臨也を愛しそうに眺め、呟いた。


「あと、994枚なんだ。挿れさせてよ臨也。早く終わりにしたいだろう?」
「…ゃ、だ、だめ、ぁ、」
「臨也、……」


男はベッドへ乗り、臨也の腰を掴み持ち上げると仰向けになるように命じる。顔をみせて、と男は臨也の涙と汗でぐちゃぐちゃになった顔を撫でた。隠すなと腕を一纏めにシーツへと縫い付け、ジャラリと鎖が鳴いた。


「んあっあああっ!ゃ!はぁ、あひゃあっ!」


男はバイブを奥にまで一気に押し込み、臨也の性器を握ると激しく扱き始めた。仰向けになった臨也に股がるようにして男が乗れば、臨也は快楽に暴れるがビクともしなかった。


「も、や、ああっ、イきたく、なっ…イきたく、ああっ、ひっ! あ、んぁあ、ゃあっ!!」


ヴヴヴッと継続的に響くバイブの振動音と共に、先走りで濡れた性器を扱く水音が臨也を耳から犯していく。熱くてたまらない身体、疼いて仕方ない身体が思考回路を潰していく。情報屋・折原臨也が、考える事を止めた時。そこには何も残らなかった。


「あ、も、だめ、イク、イ、ひっ! ああっ、ひぎ、」


カタカタと身体が震え、もう視点の定まらない赤い瞳が男に訴えると、男はあろう事か臨也の性器を強く握り扱く行為を止める。バイブの振動音だけが異様に響き、臨也は無我夢中で腰を振った。



「ゃ、ゃ、ら、イかせ、て…!」



顔をくしゃりと歪ませ涙を流し、必死に絶頂を乞うその姿。男は頬を染めゴクリと喉を鳴らした。これが知りたかった折原臨也だ。男は達成感に満ち溢れ、そして止めた手を動かし始める。始めはゆっくりと、だんだんと早めるにつれ、臨也も手の動きに合わせ激しく腰を浮かせた。


「臨也…!」
「ぅああ、あっ、だめ、イく――…っ!!」


声にならない叫びと共に激しく痙攣し臨也は達する。虚ろな瞳で荒い息を吐く臨也を目の前にし、男は下唇を舐めた。

ああ、手に入れたんだ。男は愛しそうに名を呼んだ。

「好きだよ、臨也。」



(20101105)

臨也さんを可哀想にするのが好きな管理人で本当に申し訳ない。

20110121→加筆修正

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