世界は僕を手放した | ナノ




もぞり、と金髪が揺れ、布団の中で大きな背中が動いた。鳴る時計を叩いて音を止める。ああ、壊さなくてよかった、とぼんやりと考えながら静雄は頭を掻いた。時計を見れば、朝の10時を回っていた。よく寝たもんだとひんやりとした床に足を着く。冷蔵庫をかぱりと開けて牛乳を取り出し一気に飲み干した。


(アイツ、ちゃんと帰れたんだろうな……)


遅いからと引き止めたが、仕事があると無理に帰った恋人の姿を思い浮かべる。眠たそうに瞼を擦るあの仕草は同年代だとは思えない幼さがあった。いつもはプライドが高い臨也だが、夜の時間は驚くほどに素直なのだ。
少し辛そうな顔つきで帰らなきゃいけないからと服を着る臨也の顔を思い出す。あの時間では終電は無くなっていたはずだ、タクシーを使ったに違いない。流石に帰れない事はないだろうが、あのまま今も臨也なら仕事に没頭しそうだと静雄は呆れ顔でため息をつく。連絡ぐらい入れておくか、と携帯に手を伸ばした。









「ひ、ゃ、あ、も……、」


男は上品なボトルを高くあげ、液体を露になった肢体に振り撒いた。糸を引くその液体はぬるりと臨也の体を濡らしていく。秘部にたらされた、その液体。冷たさに身を震わせる臨也とは裏腹に男は熱い息をはく。


「すぐに熱くなるよ…媚薬入りローションなんだ。」


ニタニタと笑う男は自らの手のひらにもそれを垂らし、臨也の投げ出された足を大きく開かせた。微力ながら抵抗をみせるが意味はなく、臨也は頬を赤らめ、小さく喘いだ。すでに触られるだけで快楽へとつながっていたのだ。男は楽しそうに濡れた手のひらを馴染ませ、そっと排出器官であるそこへと指を這わした。


「あ、ぁあ、ゃああ…!」
「大丈夫、痛くない、」


指はゆっくりと奥へ進む。臨也は体をくねらせ、腰浮かせ中に進入する指に翻弄されていった。


「これが臨也の中……、」


興奮したように男はつぶやいて、ためらいもなく指を増やしていく。2本3本と簡単に埋まる後孔は静雄との行為によって柔らかくなっていた。ぐちゅぐちゅと腸液とローションが絡み合い卑猥な水音を立てる。男の指がイイところを掠るたびにビクリと嬌声と共に身体を震わせた。


「ひ、ぅ、あぁあ、そ、こっ…ぁ、」
「ここ、が臨也の良い所か。」
「んあああっ、ひゃ、あっ」


中を広げるように男は指を広げる。絡み付く中を楽しむ様に出し入れを繰り返し、乱れる臨也を凝視していた。可愛い、可愛いと男は呪文を唱えるように繰り返す。


「臨也の中、入れたい。」


ダメ? と男は臨也の胸の突起に舌を這わせながら呟く。臨也は必死に頭を振り、拒絶を露にした。それだけは譲れない、プライドがあった。ひっきりなしに口からは甘い声が洩れるが挿入だけは許さない、と必死に男に伝える。男は残念そうにため息をつけば、入れた指を引き抜いた。


「臨也のために、色々準備をしたんだよ。」


男は微笑みながらごそごそと何処からか出してきたもの。それは男性器の形をしたグロテスクな形状、所謂バイブと言われるものだった。男は臨也の視界にバイブをちらつかせ、ローションを垂らす。息を飲む臨也だったが後孔は物欲しそうにひくついていた。ねっとりとした笑みを浮かべ、男は臨也をうつ伏せにするとゆっくりとバイブを挿入していく。悲鳴にも似た嬌声を上げ、臨也はバイブを飲み込んでいった。


「ひ、ぁああんは、ぁあっ…!」


お尻を突き出すような体制で頭を枕に埋め、臨也は強い快楽に耐えた。身体は焼けるように熱い。そいて疼く。気持ちがよかった。天を仰いだ性器がシーツに擦れる度にビクリと身体が揺れた。バイブが奥まで入っていくのを感じながら、自身の性器をシーツに擦るように身体を揺らす。荒い息づかいが嫌だったがどうしようもなかった。ただただ頭の中は気持ちが良い、という単語で埋め尽くされる。先ほどまで助けを乞うために呼んでいた名前すら、忘れてしまうほどに。


「ほら、全部はいっちゃったね。」


気持ちいいかい、と聞いてくる男に自然と口が気持ち良いと返してしまう。ダメだと思いながらも、さらに強い快楽を求めてしまっていた。

虚ろな瞳になった臨也。もっと、と口を開いた時、リビングの方からピピピピッとけたたましく携帯の着信音が響き、僅かに我に返った。男は動作を止め、冷たい視線をリビングへと向ける。


「誰からかな、」


男は挿入したバイブをそのままに、臨也を放置し部屋を後にする。確か携帯はコートのポケットの中だ。帰ってきた時、すぐに脱いだ記憶が微かに臨也の中にはあった。
少し冷静になった頭で、今は何時なのかを考える。帰ってきて自分が目覚めるまで、どれだけ時間が経った? 部屋のカーテンは閉められていて様子が伺えない。疼く身体を必死に押さえつけ、臨也はベッドを這った。

その瞬間、動き出したバイブに悲鳴をあげる。


「ひ、ぁああっん、あっあ――…!!」


ヴヴヴッと鈍い音を響かせながらバイブは臨也の中をかき混ぜるように動き回る。突然の刺激にベッドへ埋もれた。シーツを握る指が白くなり、ぐぐもった嬌声が聞こえた。
遠距離からの操作が可能なバイブなのか、男は未だ部屋には居ない。ぐっと耐えると、ピピピピッと鳴る音が近くなる。


「ねえ、臨也。」


ドアからひょっこりと顔を見せる男の手に握られている黒い携帯。未だ鳴り響くその携帯を掲げ、男は笑った。


「電話、出たい?」


ディスプレイに表示された“平和島静雄”の名前に気付きならがも、いや、気づいているからこそ、男の口は弧を描いていた。




(20101030)

なんだか文章が気持ち悪くなってきた!
男がどんどん変態化していきます。注意。

20110121→加筆修正

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