世界は僕を手放した | ナノ




 雲ひとつ無い青空。さんさんと照り付ける太陽の光は外に出なくなってかなりの時間が経ってしまったように感じさせた。
 臨也は明るい日差しに目を細め、空を仰ぎ見る。その赤い瞳には決意の色が垣間見れた。







「情報屋を再開させたいって、本気で言ってるの?」

 臨也のマンションに集まった新羅と門田は、臨也が口にした言葉に驚きを隠せないように声をあげた。
 情報屋を再開させたい。
 それが臨也の願いであり、日常に戻るための第一歩なのだ。

 L字型のソファに四人は腰掛け、玄関側に門田と新羅が肩を並べキッチン側に静雄と臨也が並んだ。
 臨也の言葉に静雄は何も口を挟まない。もともと静雄には情報屋の再開について話をしていたのだ。

 本音を言うと、情報屋なんて危ねえ仕事、辞めちまえばいいと思ってる。

 真剣な顔で静雄はそう言った。臨也はその台詞に言葉を失っていると、と静雄は続け、手前の好きなようにしろよ。手前、束縛とか嫌いだもんな。と苦笑いを零した。
 臨也は何も言う事ができなかった。すべてわかっているから、というかのような静雄の言葉に、じわりと胸の中が温まる。そして胸にそっと手を当てた。シズちゃんには敵わないなあ。そう呟いて、協力してくれた新羅や門田達にもこのことを告げたいのだと臨也は言ったのだ。

「君の中では色々落ち着いたのかもしれない。けど実際、不甲斐ないけれど何も解決していないんだ。危険すぎる」
「犯人の目途だってたってないんだぞ? わかっているのか?」
「わかっているさ。けどずっとここで落ちぶれていても何も変わらない。そうだろう?」
「それは…」
「ずっと俺が動かないのも粟楠会に目をつけられるし、犯人だってどうでるかわからない」

 臨也の言葉に二人は口をつぐむと、はあ、と深い溜め息をついてわかったよ、と臨也の真剣な眼差しに折れた。けど、無理矢理な行為とかは禁止だからね、無茶だけはするなよ、と二人は声を揃えて臨也に忠告を繰り返す。

「シズちゃんもお仕事復帰だから」
「わかってる」

 これで静雄も日常に戻れる。背負わせてしまった罪悪感からも解放してあげる事ができるのだと思うと、臨也はほっと胸を撫で下ろした。

「これから、どうすんだよ」

 今まで口を挟む事が無かった静雄がようやく口を開く。響いた声はどこか低く冷たい怒りを感じさせた。その矛先はきっと、犯人に向けられたものだろう。

 皆の視線が臨也に集中する。犯人を野放しにするわけにはいかない。だが手掛かりがないのだ。臨也が情報屋を再開し、またふらふらと歩き始めた時、同じ事が繰り返されないとは言い切れなかった。

「自分に利益をもたらさない人間の顔はすぐ忘れる俺だけどさ、彼の事は本当に知らなかったんだよね。はじめましてだって、相手も言っていた。だから、ドタチン達は反対するだろうけど、」

 続く言葉に三人は顔をしかめた。だが、反対の声をあげる事はなかった。

 数日前とはまるで違う折原臨也の姿があったからだ。




(20110629)

すっごく短くてすみません…区切りが悪かったので…!
次で終わります、たぶん、

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