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7/27〜8/7までの拍手お礼文でした^^


※来神時代




「暇、ひま、ヒマすぎ」

クーラーのかかった涼しい自分の部屋でダラダラ過ごす高校最後の夏休み。
特にすることも無くベッドの上で携帯を弄る。誰かにメールする訳でも、電話する訳でもなく携帯を弄るのも飽きてきた、そんな時。
ふとカレンダーに目を向けると昨日から今週一週間は学校で補習があるのだと気付く。
自分は高校3年にもなって夏休みに補習を受けるような落ちぶれた人間では全くないのだが、カレンダーには教科と補習時間までもかしっかりと書き込まれている。

それは、

「…今シズちゃん学校かー」

自分が補習を受けるがために書き込んだのではなく、静雄が受ける時間を把握するために書き込んだのだ。





臨也が学校に着くと、これまた丁度良い感じに補習が終わったのか静雄が難しそうな顔をして教室から出てきた。

臨也は好都合だとばかりに名前一文字一文字伸ばして静雄の名を呼ぶ。
するとドサッと静雄の手からバックが落ち……落ちる音がしたから教科書やノートはちゃんと持ってきたのか、と他人事のように臨也が感心する中、静雄はなんで手前がここに居ンだよッ!と言わんばかりに眉を吊り上げた。

「シズちゃん補習お疲れ様。ちゃんと理解できた?補習が補習の意味を成してた?」

わざとらしく肩を竦めてやると静雄のいつもの怒声が響く。
それを合図にまだ止まらない汗を拭いながら臨也は来た道を全力疾走で戻る。階段は勿論2段跳ばし、3段跳ばし。
臨也は楽しそうに笑いながら走った。
窓から見える真っ青な空に、解放感を覚えながら後ろ飛んで来る掃除用具の入ったロッカー、机、椅子、を避けながら校内を走り回った。

蝉は自らを主張するように啼き喚き、太陽はこれでもかと照り付ける。
汗は止まらなず、走る足も、止まらなかった。





だるい。
静雄を適当に撒いて、ようやく足を止めると第一にそう思った。
真夏に校内を走り回れば当たり前かと汗をYシャツで拭って深呼吸をするが温い空気が肺に入るだけで全く気持ちが良いものではない。
こてん、と壁に寄りかかってみるとひんやりと冷気が伝わってきて気持ちが良い。
頬を壁につけるとコンクリートの冷気に上がった熱を少し冷まされる気がした。
そのまま座り込むと一層蝉が鳴き始めたような気がしてまた気温が上がったような気さえする。

(あっついなあ…)

一体自分は何をしに学校に来たのかと苦笑いを溢す。
だが初めに立てた目的は達成されたのでもう学校に用は無い。
涼しい我が家に帰ろうかと立ち上がるが、またぺたりと壁に寄りかかってしまった。
どんだけ自分は壁の冷たさに感動したんだと溜め息をつくが、やはり身体がうまく言う事を聞かない。


「……、?」

なんだ?と臨也は疑問に思ったが頭がうまく回らない。
――……臨也ッ!
すると静雄の声が廊下に響いて、もう見つかったのかと淡々と考える。
逃げなくては今度は何を投げられのかわからない。
今度は教卓かもしれない。それこそ黒板をひっぺがえしかねない。
…本当にシズちゃんは面白いなあ、と臨也は薄く笑いながら、ぬるま湯の意識を、手放した。





目が覚めるとベッドの上だった。
まさか今までのは夢だったのかと何度か目を瞬かせる。
あれ、と咄嗟に出した筈の声は掠れていて声にならなかった。
特有の薬の匂いに気付いてここが保健室なのだとわかった。

「起きたかよ」

視界の中に現れた金髪、もとい静雄の姿に息を詰まらせた。

「なんでシズちゃん?え?」
「熱中症だそうだ、バカか手前」

バシッと静雄は力を加減しながら臨也のでこを叩く。
ああ、ちゃんと立てなかったのは目眩を起こしていたのか。
臨也は納得したように呟くと、また静雄に叩かれる。さっきより力が籠っているそれに抗議の声をあげると静雄は呆れたように額に手を当てた。

「少しは反省しろよ…」
「シズちゃんが追いかけてこなければ良かったんじゃない?」

ふふん、とバカにするように笑いながら答えると静雄は目を細め、歯切れが悪そうに口を開いた。

「……悪かった」
「…………謝られた…」
「悪いか」
「ううん。悪くない。むしろ悪いのは…俺だよねえ…」
「へえ、わかってたのか臨也くん?」
「うわ、嫌味たらしい…迷惑かけちゃった。悪かったね、シズちゃん」
「……素直な手前ほどキモいもんは無いな」

シズちゃんは本当に素直じゃないなーと臨也は口を尖らし、また瞼を閉じる。
カタン、と椅子が鳴いた。

「水、置いとくからちゃんと飲めよ」
「ん、ありがと」



(こんな日も悪くない)


蝉の声は未だに煩くて、でもシズちゃんの声は心地よかった。






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