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 大声で鳴き喚いた二人を宥めるのに一時間。意味もなく二人は泣き続け、泣きやんだかと思うと、今度はお腹が空いたと訴え始めたのだった。
 ここでようやく新羅はこの二人を実験台にした事を悔やんだが、それを言っている場合ではない。小さな二人の手をとり、街へと繰り出した。それは小さくなった二人のための衣服の調達や、食糧の確保のためである。

「新羅、これ、おいしくない!」
「はあ? うめえよ!」
「えーシズちゃんこれがおいしいの?」
「はいはい、黙って食べようねえ、もう…迷惑千万、困ったものだよ、本当に君たちはどんな姿になっても」

 入ったお店はファーストフード店だった。静雄がここが良いと新羅の白衣をひっぱり駄々をこねたのだ。臨也はジャンクフードなんて嫌だ! と声を上げたが新羅は白衣で、小さな二人を連れちゃんとした店に入るのも難しいと考え、騒ぐ臨也の口を塞いでこのファーストフード店に入った。

「しかもこれすごく食べづらい!」
「お前の食べかたがいけないんだよ!」

 臨也は紙に包まれたハンバーガーを落とさないようにとしっかり両手で包み込む。だが臨也の小さな手にとってそれは少しばかり大きく、口に運ぶもうまく食べる事ができない。臨也の口のまわりは、てりやきソースだらけになっていた。それに気が付いた新羅は抑えきれない笑いを必死に堪えながら携帯を取出し、カメラ機能を起動させる。

「臨也、ほら、こっち向いて―――…」
「んだよ手前、きったねえの!」
「うるさいなあ! 食べづらいって言ってるじゃん! んー!」

 静雄は備え付けの紙を雑に掴むとそのまま臨也の口元に持っていき、ガシガシと臨也の口元のソースをふき取っていた。臨也は力の強い静雄の行為に、痛いと悲鳴をあげるが、静雄はそんな臨也の反応が面白いのか、笑みを浮かべながら紙を持つ手を止める事はなかった。

「いたい! しずちゃん! 痛いってば!」
「うっせえ! 口のまわり汚くしてんのがわりい!」

 二人の行動を見ていた新羅は静かに携帯をしまう。当初の予定では子供をつくってセルティと新婚のように過ごす予定だった。それがどうしてこうなった。

「君たち、結構楽しんでいるだろう…!」
「新羅! シェークがのみてえ!」
「しんらー! 早く帰ろうよ俺もう疲れたよ」

 白衣を左右から引っ張られ新羅は為す術がない。どんな姿になろうとも、静雄と臨也が変わる事はないという事を新羅は噛みしめていた。




 小さな最強くんと共同生活:3




(20110607)


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