拍手ログ | ナノ



―――拍手連載1話―――


 ぽんっ! と気の抜けたような音が響いた。
 場所は岸谷新羅の住むマンションの一室。リビングでその音は鳴った。もくもくとどこからともなく溢れる煙にセルティはあたふたと身を振るが、一方の新羅はニヤニヤと口元を緩め、煙が薄くなり現れた影に両手を広げて喜んだ。


「成功だよ! セルティ!」


 真っ白な煙がはけ、現れた人物。そこには見慣れた姿があった。


『なっ、なんだこれは―――…!』


 そこには、身体が小さくなった臨也と静雄の姿があったのだった。

 見た目からして小学生低学年ほどの体つき。それは臨也だけでなく静雄も同様で、かけていたサングラスが大きく、耳にかからない程だ。臨也のトレードマークであるファー付きコートはもうフードを被ったら顔が隠れてしまうほど大きく羽織れるものではない。袖もおおく残り、手が見えない。
 二人は暫く状況が把握できないのか幾分大きくなった瞳を瞬かせ、顔を見合わせていた。だが新羅の「やっぱり僕は天才だね!」という陽気な声にハッと我に返った。


「どういう事だよ! しんら!」


 少し見上げるぐらいの身長差が今では首が痛くなりそうな程。臨也は大きすぎる服が邪魔をし、動きづらいながらも新羅のズボンの裾を必死に引っ張る。用事があるから少し今から来てくれないかとメールをもらって訪れた。それなのにどうして。
 発した声が幼くなっている事、呂律がうまくまわらない事にサァーと血の気が引いてくるのを感じる。小さな手で拳をつくり、静雄は必死に新羅の足を殴った。
 両足に小さな痛みを感じながらも新羅は笑みを絶やすことはない。口を開けば悍ましいセリフを放った。


「セルティがね! 子供が欲しいと言ってくれたんだ! でもすぐ子作りなんて大変だろう? だから君たちで疑似体験をしたいと思って、小さくなって貰ったんだ!」
『ええっ! じゃあこれは私のせいなのか?!』
「せいなんて! そんな事ないよ!」
「ああ、セルティは悪くねえな。しんら、手前がすべて悪い、とりあえずなんだ。しぬか?」
「うん。そうだね今回は俺もしずちゃんと同意見だ。しんでよ、しんら」
「あはは! 二人とも可愛いなあ!」
「しね!」
「死ね!」


 小さくなった二人ではナイフを持つ事も標識を持つ事もできない。たとえ最強だとうたわれていた二人だとしても小さな体でできる事など無いに等しい。新羅にあしらわれ怒りに体を震わせても勝てる相手ではなかった。足を殴ろうともそれは新羅にとってぽかぽかと叩かれているようなものだ。


「これから、君たちは私たちの子供ってことで!」


 ふざけるな! と二人が声を荒らげる前に新羅は二人を抱きかかえていた。



小さな最強くんと共同生活


(20110514)


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