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 大阪、京都、北海道、沖縄。
 様々な旅行会社のパンフレットを見ながら臨也は鼻歌交じりで予算のページに印をつけていった。
 隣で門田はそれを覗き込みながら、時折緩む口許にその理由を聞く。んー? と臨也は小さく首を捻り持っていたボールペンでとんとん、と机を叩く音が響いた。


「純粋に、楽しみだからかなあ!」
「旅行とか、苦手というか面倒だとか言うかと思ったけどな」
「まあ…校外学習とかは面倒だけど、これは自発的にやるものじゃない? だから良いんだよ。ドタチンも楽しみだろう?」
「まあな。お前は、静雄は来てくれればなお嬉しいんだろ?」
「もちろん。シズちゃんが居るから面白いんじゃない」


 あははっと笑う臨也に門田は小さく小突く。
 新羅のセルティ、と呼ぶ声を方耳で聞きながら揺れる黒髪を見た。
 臨也は静雄への想いに気がついている


(けど、このままでいいと思ってるのか…)


 日光もいいな、温泉とか。
 紙にメモしていく臨也を見つめながら、卒業というタイムリミットが近づいてきている事をわかっているからこその卒業旅行計画なのかと思うと、門田は胸が苦しくなる思いだった。
 だが、それでいいのかと言ったところでいいんだよとケロリと言ってしまうのが臨也である事も門田は知っていた。

 卒業式まであと、二週間。
 今までの三年間を考えると果てしなく短い期間。卒業すればそれそれが違う道を進む。
 臨也は静雄が就職希望なのを知っているのだろうか、


(知ってる、よな。そりゃあ)


 だが静雄が自身の事をどう想っているかは、知らないのだろう。
 どうしたももんかな、と親のような心境になる事に自分は本当にお人よしだな、と自嘲の笑みを零した。


「なに? どうかした?」
「いいや。旅行が楽しみだな、と思っただけだ」
「そうだねー、きっと二度とないよね泊まりで旅行とかさ」


 二度と無い明言してしまう事にため息をついて、門田はそうかもな、とだけ答えた。
 静雄はどうするのだろうか。アイツの性格からして、このまま何もなく終わるとは思えない。
 これから静雄からの悩み相談が頻繁にあるかもしれないと、二度目のため息をついた。

 ああ、早くくっついてしまえばいいのに。
 投げやり気味に臨也の頭をぽんぽんと叩いて、三度目のため息をついた。


(20110320)


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