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「卒業旅行?」
「そう、卒業旅行!」
「まだ卒業してねえだろ。」
「だから今から計画するんだろ!」
「いいんじゃないか? 楽しそうだな。」


だよね! と臨也はどこから持ってきたのか大量の旅行会社のパンフレットを広げながら声をあげた。椅子に体育座りのように足を抱えて座り、臨也は京都が良いかな? 大阪が良いかな? と終始笑みを溢す。門田はそんな臨也の隣に立ち、パンフレットを覗き込んだ。

静雄はその2人の姿を頬杖をつきながら眺めていると、隣にいた新羅が静雄の肩をつつく。濁音のつく声色で返事をした。


「あ゙? んだよ、」
「行きたくないの? 旅行。」
「は? なんで。」
「すごい顔怖いよ。」
「あー。別に行きたくねえ訳じゃ、」
「だってよ臨也!」
「えーなに? シズちゃんも来るのーッ?」
「悪いかよッ!」


じゃあ、4人だな。と門田は臨也のノートに人数を書き込んだ。



卒業旅行計画。数日後4人は、来神高校を卒業する。
色々な事があったなあ、と静雄は思い返す。全てはあのはしゃぎながら卒業旅行を計画している折原臨也との出逢いからだ。数えきれない程の喧嘩をし、数えきれない程の物を破壊した。
教室の中を見渡し、自身の使っている机を見つめる。

卒業。

初めてじゃないその行事だが、初めて感じるそれはきっと切なさだ。静雄は優しく机を撫でた。
もうこの場所で肩を並べ勉強することも無くなり、同じ空間に居る事は二度とないだろう。静雄は少しざらつく机を撫でながら、脳裏に過った人影に頭を振った。


「卒業旅行かあ。セルティも連れて行ってあげたいけど、まあ…、いい思い出になるといいね。」
「そう、だな。」


卒業旅行。確かめるように静雄は呟いて、再度、卒業、とだけ言った。
あははっ、と笑い声を上げ門田に微笑みかける臨也を見つめ静雄は口を閉じた。

気持ちを伝えるのに、時間はあまり残されていない。数日後には卒業式が控え、卒業旅行に行った後、予定は真っ白だ。
卒業してしまえば、臨也は大学へ進学する。それを新羅から聞かされた静雄は目を丸くしていた。就職希望の自分とは違い大学に進学する。それは、目の前に広がる世界の違いを思い知った瞬間だったのだ。
静雄はこのまま卒業していいのかと問われれば、嫌だと答えるだろう。未練があるのかと問われれば、あると答えるだろう。
未だ伝えていない、言葉にしていない。



好きだと伝えるまで、あと、




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