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12/5〜1月6日までの拍手お礼文でした^^




おはよう、という朝の挨拶が飛び交う昇降口。生徒達は自身の下駄箱から上履きを取りだしクラスへと向かっていく。友人と談笑している者、音楽を聴いている者。皆が防寒対策にマフラーや手袋、カーディガンを着ている中、平和島静雄はマフラーを巻きながらも微かだったが額に汗を滲ませていた。

早足でクラスへと向かい、窓際にある自分の席に座るのと同時に窓を開ける。冷たい風に滲む汗が冷えて心地よい。静雄は12月だというのにブレザーを脱ぎ始め、椅子にかけた。カーディガン姿になって、窓の縁に肘を立てていると、せっかく開けた窓を唐突に閉められた。


「寒いんだよ! シズちゃんのアホ!」


静雄が流れる冷気に黄昏ていると、たった今登校してきた臨也が鋭く睨みながら声を上げた。運悪く静雄の前になってしまった席に手をかける。マフラーを巻いてもなお赤くなっている鼻が寒さを物語っていた。冷えているのであろう手のひらに、はーっ、と息をかけつつ臨也はなお静雄を睨み付けた。だが臨也が寒かろうが静雄には関係のない事だ。負けじと静雄も臨也を睨みつけた。


「なんなの? この時期なのに窓開けるのか頭くるってるんじゃないの? 新羅に診てもらえば。」
「うっせな俺はチャリ通だから汗かくんだよ、十分暑いんだよ! 早くとれよそのマフラー! 暑苦しいんだよ!」
「この時期にマフラーは普通だから! あたかも自分が正しい風に言うなよシズちゃんの分際で。」
「手前ケンカ売ってんだろ…そんなんだろ、ああ゙?」

ガタリ、と静雄は立ち上がり臨也も隠してあるナイフへと指を走らせる。張りつめた空気の中で、制止をかけたのは臨也の、くしゅ、といった咳ともとれる、小さな“くしゃみ”だった。


「…寒ぃのかよ。」
「……そう言ってるだろ、ケンカ売ってるのはシズちゃん方なんじゃない?」


臨也はくしゃみをしてしまったのが恥ずかしいのか、鼻から口にかけてを手のひらで覆っていた。完全に戦意喪失した静雄に臨也はマフラーを取って乱暴にバックへと突っ込む。寒い寒いと呪文のように唱えている臨也を静雄は固まったまま凝視していると、ふと、臨也がセーターを着ていない事に気づいた。


「おい。寒い寒い言ってるくせにセーターはどうしたんだよ。」


静雄の言葉に臨也はピクリと動きを止め、鋭さをました睨みが静雄に突き刺さる。なんだよ、と静雄も青筋を浮かべると臨也はばん、と教科書を出して小声で呟く。だがその音は予鈴の鐘の音に遮られ静雄の耳には届かなかった。


「あ? なんつった?」
「……洗っちゃって、今日は着て来てないって言ったんだよ!」


嫌みかよウザい! と臨也は叫びながら乱暴に椅子を引いた。机に伏せる形で肩を抱く。後ろの静雄には表情は読めないが、きっと寒い寒いと文句を言っているのだろう。静雄はだっせえ、と臨也に聞こえない程に小さな声で呟くと、着ていたカーディガンを、脱いだ。


「これでも着てろ。」


ばさり、とそのカーディガンを臨也の頭にかけると、静雄はブレザーを手にとり袖を通すと席についた。しばらく動かなかった臨也だったが、かかったカーディガンに手を伸ばすと、ぎゅ、と握る。


「……汗臭いんだけど、」
「文句言ってんじゃねえよ。可愛くねえな。」
「可愛いさ求めんな。」
「拗ねんなよ。」
「……死ねシズちゃん。」
「手前が死ね。」


臨也はそのままずるずると明らかにサイズの大きなカーディガンを自身の頭から引き剥がすと、暫くそのカーディガンを見つめていたが、決心したように学ランを脱ぎ始めた。朝の連絡をする担任の声を適当に聞き流しながら、臨也は静雄のカーディガンに腕を通す。担任を横目に見ながら、だぼついた茶色カーディガンを羽織る臨也を見て、悪くねえな、と静雄は思った。
着たカーディガンの裾をじろじろと臨也は見始め、後ろを振り向く事なく口を開いた。


「裾が長すぎぼたつきすぎ、」
「だから、」


文句を言うんじゃねえよ、と続けようとした言葉は起立、と言った号令係の声に遮られる。ガタガタと椅子の音がうるさい中で、臨也は呟いていた。


「シズちゃんの匂いがする。」



(20101205)

拍手ネタ募集「カーディガンorセーター」より



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