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※津軽サイケとシズイザ




窓ガラスに手を添えればひんやりと冷気を感じた。
外は薄暗く、カラフルな傘が揺れる。
臨也の高級マンションから見下ろす新宿のまちはいつものように人が溢れていた。
たとえ雲が空を覆おうと、寂しく雨が降ろうと、人はまちを休ませない。

「きょう、七夕なのにずっと天気わるかったね」
「…そう、だな」

サイケは肩を落とし新宿のまちを歩く人を見下ろした。
隣に佇む津軽はそんなサイケにどう言葉をかけていいのかわからず、簡単な定型文を返す。
いつもは明るく無邪気なサイケが静かにただぼんやりとしているのは津軽の胸に違和感を覚えてさせた。

この違和感が何なのかは、わからない。

「おりひめと、彦星はあえなかったのかな」
「ずっと曇りだったから…」
「…あえなかったよね」

ふとサイケは空を仰いで、今にも泣きそうに顔を歪めた。
チリッと津軽の胸に何かが走り、咄嗟にサイケのヘッドフォンがずれるのもお構い無しにサイケを抱き寄せていた。

「つがる…?」
「良く、わかんねえ」

自分の感情を制御できず、津軽は困惑していた。
歌う事を主として生まれた自分達が、涙など流せる訳がないのに。
サイケが今にも泣いてしまうのではないかと、泣き顔など見たくはないと、そう思ったのはなぜか。
この胸に生まれた、この心臓がない胸に生まれた、締め付けられるような感情は一体なんなのか。

「良く、わかんねえよ」

ただぎゅっと抱き締めると、サイケも求めるように背に手を回した。
暖かさや冷たさは理解でき、感知できるのに、どうしてこの感情は認知できないのだろうか。

あのね、
サイケは消えてしまうのではないかと思えるほど小さく、震えたような声を漏らした。

「織姫とひこぼしが出会えたらね、いざやと静雄にね」
「ああ、」
「会えるってすてきなことだよねって言おうとおもったの」
「ああ」
「だって、ふたりとも、いつだって会えるのに、いつも…きらいって言うから」
「そう、だな」
「よくわかんない…このさわさわする感じ…よく、わかんないよ」

サイケは津軽の胸に顔を埋めるように強く額を押し付け、黙ってしまった。

よく、わからない。
嫌いだ嫌いだと言い合う二人は今だって同じ空間に存在していて、静雄はタバコをくわえ、臨也はパソコンに向かい、津軽とサイケの「会いたい」という願いを叶えてくれた。

嫌いな人の家を訪問しなければならず、嫌いな人を家にあげなければならないのにどうして願いを叶えてくれたのか。

よく、わからない。

二人のマスターの考えと、生まれた感情。
津軽とサイケはただじっと抱き締め合い、相手の存在を噛み締める事しかできなかった。



(きっと、恋だ)





(20100707)

5万打もろくに更新しないくせに短編更新ですみません…
七夕を生かしきれてないのはもう!救いようが!ない!

好きだけど好きという感情を知らないアンドロイド津軽サイケ。
マスターの静雄と臨也が本当は両思いだと気づくけど好きって感情がわからないから、嫌い嫌い言い合う二人がなんとなく嫌な津軽サイケ。



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