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昔は、

金色の王冠を被った青年は思いました。
昔はあんなにも自分を慕い、ついて来てくれていたと。自分より少し身長の低い彼は、日々也と名前を呼んで笑顔を向けてくれていたと。

青年は木にもたれかかり、小さなため息をつきました。そのままマントが汚れるのも気にせず座りこみ、膝を抱えてゆっくりと目を閉じました。
時代は流れ、想い人は違う国へと行ってしまったのです。王である青年は永遠の命を授けられ、半永久的に自身の国を治め続けることが使命でした。

そう、王はずっとある青年に恋心を抱き生きてきたのです。





王の治める国は大変大きく、国民も王である青年を信頼しているとても素敵な国でした。
王自身が馬に跨り国の中を巡回することもありました。それほどに王もまた国を愛していたのです。国民は笑顔で王に手を振り、王もまた皆の幸せを願っていました。

そんな幸せな毎日が続いていたある日。
王は金色の髪を持つ青年に出会いました。青年は守護の役目を担った、新人なのだと言いました。青年は始めこそ王を王子だとは知らずに話しかけ、王子だと知っても驚くだけで態度を変える事はありませんでした。王はとても面白い者だな、と笑いました。
王はこの国に来たのは初めてだという青年のために馬に乗せ国を回りました。聞けば青年と王は同い年。ですが青年と王は住んでいた世界が違うため、双方の話に興味津々に聞き入っていました。


「お前は、ずっとこの国に居るのか?」
「ああ、そのつもりだ。お前を護りたい。」


そう言って青年は王の手をとりました。
ですが、青年の身長が王を越えた頃のことです。青年は他の国へと行かなくてはならなくなってしまいました。
この国が平穏すぎたせいです。近くに他の国が存在しないこの国は他勢力に侵略される事もなければ、王に歯向かう国民も居はしないのです。そんな国に守護者などいらないのだ、と唱えたのは王の側近でした。
王は必死に青年を引きとめました。王は国民を愛していましたが、青年のように気兼ねなく話かけ友人として付き合ってくれたのは彼だけだったのです。


「お前は私をずっと護ると言っていたではないか!」
「この国に、お前に俺は必要ないんだ。」
「守護などどうでもいい、私の友人として、…!」


伸ばした手は振り払われてしまったのです。
ごめんな、と言って美しい金髪が夕日に染まり悲しく煌いていました。座りこんでしまった王に、伸ばされる手はありあせん。ぽたぽたと落ちるそれを涙だと、教えてくれる人もいませんでした。そして、王が抱いていた感情が恋だという事すら誰も教えてはくれなかったのです。
気づいていたのは王の側近だけでした。

青年は言いました。
毎日手紙を書くと。王は言いました、ずっと待っていると。


「お前がここに帰ってくるのを私はずっと待っている。」


それからも王は国を治め続け、毎日届く手紙を読んでは返事を書き続けました。
青年からの手紙が毎日から毎週に変わり、月に一通、半年に一通になろうと王は沢山の想いを文字に込めました。気づけば、文通を始めて五十年が経過していたのです。
王は永久の命を持つ者。老いを知らず、死を知らない王は手紙が途絶えた時、初めて人の死を知ったのです。

あれから、青年が王の国を訪れる事はありませんでした。

王はあて先のわからない手紙を書いてはそっと部屋の奥底にしまい込みました。もちろん青年からの手紙も大切に保管されいています。

それはそれは、叶わぬ恋でした。

王はもっと早くに出会っていれば良かったのかと涙を流しましたが、どんなに早く出会っていても自身が王である以上、何も変わらなかったであろうと声をあげました。共に行く事もできず、共に逝くこともできないこの悲しさを分かち合える者は居ませんでした。
青年が王をどう思っていたのかもわからず、青年は逝ってしまったのです。
金色の髪の毛、とても綺麗な瞳。
王は一時も忘れたことなどありませんでした。



「あんた、大丈夫か?」


そう。
あの暖かな声ですら今すぐに思い出せる程に、王は彼に恋をしていたのです。


「おい、聞こえてるか?」


呼びかけの声に閉じていた瞳を開けると、そこには金色の髪が見えました。
座り込んでいる王に青年は手を差し伸べていたのです。
息が止まるのを王は感じました。風に乗って流れる美しい金色の髪に王は目を見開き、唇が震えるのを感じました。


「デ、リック…?」


青年のその姿は彼と、もう何百年も前の彼と変わらない姿でした。唯一彼と違い、耳にはヘッドホンが見えましたが、それは大変な月日が流れた事を意味していました。その姿は、彼そのものだったのです。

青年は不思議そうに王を見つめました。
別人だとしても王は溢れる涙を止めることができませんでした。


「待っていた、」


王は差し出された手を握り立ち上がると、涙を拭い震えながらも笑ったのです。


「私の名は、日々也。」


―――――……私の従者になってくれないか?

そうして今度は同じ時を過ごして欲しい、と王は願いました。


君のとなりで命果てたい


(20110202)

シリアスなデリ日々ですが、きっとラブラブになるデリ日々です。
初めはデリ(→)←日々だったんですが、側近(執事静雄とかだったら素敵)がデリ雄にけしかけたんでしょうね…。
全て捏造な自分話ですが、こんなデリ日々はいかがでしょう…><




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