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恋は盲目、


恋は常識や理性を失わせ、他の物事を見えなくさせる。盲目的になると言われているそれは、きっと人をも狂わせる。




「それで? 今回は何をしでかしたんだい?」
「何もしてない。」


つん、といい放つ臨也は苛立ちを隠せないのか舌打ちをひとつこぼした。

新羅の自宅マンション。臨也は静雄に喧嘩を売られ、できた傷を手当てして欲しいとチャイムを鳴らして来た。珍しく臨也の姿はぼろぼろで、頭からは血が軽く流れていたのだ。驚きに目を丸くするのも一瞬で、新羅は綺麗な顔が台無しだね。と冗談混じりに笑って臨也を中へと通したのだった。

額にできた切り傷を消毒し、包帯を巻く。見かけよりは軽い怪我に、良かった、と胸を撫で下ろす新羅は臨也の事が、


「はい、終わり。」
「ん、」


器材を片しながら、新羅は笑い、コーヒーを用意する。カップにコーヒーを注ぎながら、ソファーにふんぞりかえる臨也に相変わらずだねえ、と笑えばギロリとワインレッドの瞳が光った。


「ただ純粋に仕事に来ただけなのに“手前が来るとろくな事がねえ、ブクロで悪巧みなんざしてんじゃねえよ”だって。被害妄想も ほどほどにして欲しいもんだよ。」
「けどまあ、取引相手が何かしたいがために君の情報を欲しがった訳だから、静雄の言い分も間違ってはないかな。」
「……だからシズちゃんは嫌いなんだよ。」


出されたコーヒーカップに指を絡め、口に運んでコクりと喉が動く。隣に腰を落ち着かせ、軽く息を吐く臨也を見て新羅は薄く、笑った。


「ほどほどにしなよ、臨也。」
「シズちゃんに言ってあげてよ。毎回標識だの自動販売機だの、前は軽自動車を投げられそうになった。」
「さすが静雄…。」


相変わらずな友人の力。それに感心したようにうんうんと頷く新羅だったが、ふと未だイライラとしている臨也を見据えた。


「君は普通の人間なんだからね。いつだって怪我をするのは臨也じゃないか。」
「化け物だからね、アイツ。」


本当に最悪だよ、と臨也は溜め息をつく。流れる前髪に新羅は手を伸ばし、軽く触れた。


「なに?」
「いや、…俺はね臨也、綺麗なものが好きなんだよ。」
「…? 何の、」


はなし? と首を傾げた瞬間、カシャンッ! と持っていたコーヒーカップが悲鳴を上げた。ぐ、と押される肩に臨也は息を詰まらせる。勢いよくソファーに押し倒され、視界に広がるのは黒い髪と瞳が見えない眼鏡だった。


「何の真似かな?」
「綺麗な黒髪だね、臨也。私は綺麗なものが好きでね、その綺麗なものを、」
「ちょ、っと、新羅!」

「汚したくなるタイプなんだ。」


好きだよ、と新羅は口に出す事はなく胸の中だけで呟く。れろ、と臨也の耳に舌を這わせれば否定の言葉が飛んだ。


「しん、ら! 離せ!」
「うん、わかった。」


あっさりと出た了承の声に臨也はぱちくりと目を瞬かせる。結局は遊びか、と沈められた上半身を戻そうとソファーに手をついた時だった。


「ひ、ぁ」


ビクッ、と激しく肩を振るわせ無意識に出た声。力無く身体はソファーへと逆戻りし、身体には芯からじわじわと迫る“何か”が感じられる。大丈夫かい? と心配している様子ではまったくない、少し笑いの入ったその新羅の声にギ、と鋭く睨み付けた。


「僕は綺麗なものが好きでね、綺麗な君を傷付ける静雄がどうも許せない。」
「そん、なの、俺は、関係ない…!」


上がる息、どんどんと熱くなる身体。さっきのコーヒーに何か盛られていたのか。可能性のあるそれに内心で舌打ちをうつ。新羅はソファーに膝をつき、ギシリとしなる音。縮まる距離に臨也は流されてはいけない、と声を上げた。


「お前にはセルティがいるだろ!」
「セルティも十分素敵で美しい。そんな事、百も承知さ!」
「俺、さっきシズちゃんにそれなりに傷つけてきたから、シズちゃんもきっとここに来る。」
「じゃあ、臨也の厭らしい声を聞かせてあげようか?」
「ふざっ、! ゃめ!」



抵抗する腕をひとつに纏め頭の上で固定してやれば、抵抗するすべは全て潰えてしまう。必死に暴れるが、ズキリと傷が傷んで動きが鈍る。さらに飲まされた薬の作用で息が熱い。


「ゃだ、新羅、ま、って、」


レンズ越しに見える新羅の瞳がいつもの色とは違ってみえる。混ざったような濁ったようなそれに臨也は息を飲む。待てないよ、と至極優しい声が耳元で囁かれた。そのかかる息にすら反応してしまうと、くすくすと新羅は嬉しそうに笑う。


「恋は盲目、って言うよね。けど俺はね臨也。」
「しんっら! しん、…ぁあ、」


新羅は膝で臨也の股間をぐりっ、と押し付け、首筋を舐めた。ひ、と声を引きつらせ潤む瞳からは、見たことのない臨也の大粒の涙が溢れ、その姿に新羅は口元を歪ませた。



恋は闇、だと思うよ。





(20101211)

新臨とかどうですか!

…ゲス谷さんになっちゃって私がびっくりです!
新羅→臨也(→)←静雄な感じで如何でしょうか。
可愛い感じの新臨の方が好きなんだけどな、おかしいな、どうしてこうなった。



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