A melody of love. | ナノ



学校の終了を示す鐘の音が、校内に響き渡った。
静かに座っていた少年達は、それを合図にするかのように一斉に騒ぎだし担任教師は苦笑いを溢す。
さようなら、と教師が言うと、少年達は大きな声でさようなら!と返した。

がやがやと騒がしい教室で皆がそれぞれ教室を出ていく。
茶色がかった髪の少年もまた、軽いランドセルを背負い席を立った。横に付けた鈴が涼しげな音を響かせた。
じゃあな!とクラスメイトに声をかけられ、おー、と生返事をしながら廊下を歩いていく。すると、視界の端に見慣れた黒髪が舞い込んだ。

「帰ろうか、静雄くん」
「新羅」

新羅と呼ばれた眼鏡をかけた少年は静雄の横につき、肩を並べて廊下を進む。
2人は所謂、幼馴染みというもので自宅も近い。そのため一緒に帰る事が多かった。
クラスが別同士の2人は、今日あった事を話しながらいつもの帰路を進む。
今日、体育があった。サッカーだったんだ。理科の実験は――…、他愛の無い話をし2人は笑った。ランドセルが揺れ、鈴が綺麗な音を奏でる。

その音に重なるように、耳についた旋律。

気付けばそこは、賑わう商店街だった。
ディスプレイ用に並ぶ様々な液晶テレビ。
その画面に映し出された、静雄達と同じような年齢の少年。

「……、」
「――…静雄くん?」

静雄は足を止め、画面に釘付けになっていた。
新羅も何だと視線を向けると、そこには。

美しい少年だった。
流れるような黒髪に、ふるりと震えるまつげ。垣間見れる深みのある赤い瞳。
綺麗な衣装に身を包んだ彼は、ヴァイオリンを手に自分の音に目を伏せ、世界に入り込む。
全てが美しかった。
まだ小学生の2人が足を止め、息を飲むほどに。

騒がしいはずの周りの音が消え失せ、綺麗なヴァイオリンの音だけが聴こえる。
名さえ知らないその曲に惹かれていた。

「……すげえ」

ぽつりと静雄が無意識に呟くと、演奏が終わり、画面の中の彼がこちらを向く。静雄の胸がどくりと高鳴った。

「折原…なんて読むのかな。やっぱり同じ年齢だね。彼も小学生なんだ…すごいなあ…」

新羅が感心したように息をはく。静雄は未だ目を背ける事ができず、壇上から降りる彼を見続けていた――…。


raddolcendo
(優しく、その旋律は彼の中で響き続けた)


(20100920)

ヴァイオリンロマンス、始めました。


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