短編小説ログ | ナノ




「大好きだ」、「愛してる」それとも普通に「好きだ」?

平和島静雄は頭を悩ませていた。


先日「俺、シズちゃんの事、好きみたいだ」と真顔で言われたのだ。
あの、折原臨也に。
あいつもついに頭が沸いたのだと静雄は思った。
早急に亡き者にしてやろう、そう、思った。

「寝言は寝て言え、クソ臨也。」

鼻で笑って答えれば、あはは!といつものムカつく笑顔とともに笑い声が聞こえてくる、そう思った。
その期待(なんざしてないが、)は裏切られ、臨也の冷めた声が響いた。

「…やっぱり、嫌いだ。………大嫌い。」

そう言った臨也の顔が忘れられなかった。





あれから臨也は、ぱったりと池袋に姿を表す事がなくなった。
折原臨也は新宿を根城にする情報屋。
良く考えれば毎日のように池袋に来ていた先日までのほうがおかしかったのだ、と静雄は自分自身を無理やり納得させていた。
だが、最後に見た臨也の顔がちらつく。

(なんだ、あのいかにも“傷つきました”って面は…!)

わからない、静雄の頭にはその言葉が行き交っていた。
どうして臨也は「好きかも」なんて言ったのか。
どうしてあんな顔をしたのか、

どうして俺の足が、あるマンションに向かっているのか。

そして、
どうして俺は臨也に会いたい、なんて思っているのか。

(そんなの、俺が知りてえよ)

ついに頭がわいたのは、…俺の方かもしれない。



なんて言えばいい?
「大好きだ」、「愛してる」それとも「好きだ」?

どうしたら手前は笑いやがんだ。



***


人間観察。

なんて楽しい行為だろう、ファー付きコートを羽織った青年、折原臨也は思った。

いつもは自分のマンションの窓から見える範囲で人間観察を行うが、今日は気分的にに家でじっとしていられなかった。
うろうろと近場を歩いていると、ふと公園が目にはいった。
そこには2、3人の子供がボールやブランコで遊んでいる。
子供は見ていて楽しい。
突然考えのつかない行動をやってのける。
なんて興味深い。いつもはそう思う。
だが、臨也はただ遊んでいる子供をじっと見つめ、その場を去った。
足の進む方へ無心で歩く。
行きたいところなんてない。
結局臨也は自分の住むマンションへと向かっていった。





(なんで、)

帰路を進むと、マンションの前にバーテン服を着た見慣れた男が居た。
バーテン服の男―…平和島静雄はマンションの上を見つめては俯き、見つめては俯きを繰り返す。


「シズちゃんって相変わらず暇なんだね。」

いつも通りに。
あたかも仕事帰りかのように、臨也は平常心を装ってみる。
(あぁ、嫌だ。)

「せえな、来たくて来てんじゃねえよ。」
「だったら早く帰りなよ」

静雄の言葉に解き放たれた感情は、とても冷たく、鋭いものだった。

“拒絶”
(もう、やめてくれ)


「臨也!」


静雄を押し退けてマンションに入ろうとする臨也を引き留める。

(気持ち、悪い。)
悲しい、切ない、苦しい、ツラい。

ぐるぐると頭の中で連鎖していく感情。

引かれた手を振りほどこうとするが、静雄の力に勝つ事ができない。

「…やめろよ、」
「臨也―…」




「好きだ。」




時間が、止まった気がした。

何も聞こえない、さっきまで聞こえてた車の走る音、救急車の音やカラスの鳴き声。
何もかもが止まった。

「…え、」

必死に絞り出した言葉はたったの1文字で、何も伝わらない。
確かにわかることは、引かれた手の力強さだけ。

ぐっと手を引かれたと思ったら、気づけばそこは静雄の腕の中だった。
静雄は何も言わずただ抱き締める。
さらさらと静雄が頭を撫でているのがわかった。
いつもからは想像もできないほどの優しい力。

「…俺も頭、わいたみたいでよ、」
「なんだよ、それ」
「手前の顔がみたくて、」
「…うん」
「手前はあのムカつく笑顔が似合ってる」
「…ほめられてるのかな」

「臨也、―…すきだ。」


あぁ、夢じゃない。
2度目の告白に現実味が増す。
さっきまでの感情はすべて消え去っていた。

(あはは、どうしよう)
嬉しすぎておかしくなりそうだ。

ありえない、そう思っていた。
平和島静雄と折原臨也。
この2人が犬猿の仲である事は池袋では有名すぎる事柄だ。
いつから好きになっていたかなんて、覚えていない。
静雄は池袋最強の男と言われ、恐れられているのに。
どうしてか人が集まっていく。
それが羨ましかったのかもしれない。
そんな事、もう誰にもわからない。
臨也も静雄も“きっかけ”なんて些細な事だったのだから。


「シズちゃん、どうしよ、」
「何がだよ」

「だいすき…」


繋がった糸と意図


そして2人は甘いキスを交わした。


(20100202)

甘い、のだろうか…?
無駄に長くなってしまった。
取り敢えず静←臨の静→←臨の静臨みたいな流れ…だったはず!←
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