短編小説ログ | ナノ




あいつはいつか消えてしまいそうで。


君は確かにここにいた


あいつが居る世界はモノクロな気がする。
あいつ以外は灰色にみえるんだ。
あいつは真っ黒で、そこに存在する。

だからあいつを見つけた時、声をかけちまったんだ。
このまますーっと消えてしまいそうで。

「あ。」

池袋をウロウロしていた俺は不意に視界に現れた黒い物体に気をとられた。

(臨也。)

いつもなら近くにあるものをぶん投げて息の根を止めてやるのに。

なんだかあいつの背中がさみしそうに見えて、わざわざ混雑している人の波をかき分けてあいつの背を追った。


「臨也!」
「っ、 びっくりしたあ…。シズちゃんか。」
「あ、あぁ。」


自分でもとっさのことだったから、なんて答えればいいかわからない。

消えてしまいそうだったから、なんて、言えるわけもなく。
握ってしまった手を離して、一定に距離を保つ。


「? ・・何シズちゃん。なんか変じゃない?」
「い、いや、池袋に居るなんて珍しい、よ、な?」
「いや、昨日も来たし。シズちゃんゴミ箱投げつけた事覚えてないの?」
「あ、あぁそう、だっけ…?」


あはは、何言ってるのさと陽気に笑う臨也を見て、なんだかほっとする、というよりまた儚さが際立った気がする。
白い肌に漆黒の髪。
映える赤い目もなんだか悲しそうな雰囲気がするのは、俺だけか?


「ねえ、なんかシズちゃん、テンション低くない? そんなシズちゃん気持ち悪いんだけど。」
「は、うるせえよ。」


相変わらずの減らず口に少し安心する。
安心するっても、勝手に俺が不安になってるだけなんだけどな。


「よし! じゃあ露西亜寿司でも行く?」


そう言って臨也はおれの腕を引っ張った。


「シズちゃんとは違って稼いでるこの、折原臨也がおごってあげよう。」
「手前の財布が悲鳴を上げるまで食ってやるから安心しろ。」
「…シズちゃんが言うと冗談に聞こえないから嫌だよ…。」


冗談じゃないからなと付け足すと、臨也はただ「うん」とつぶやいた。
知らぬ間につながれた手と手。
臨也の手のぬくもりに驚いた。

(あぁこいつもちゃんと温かいんだ)

いつもあの赤い目で遠くを見つめている臨也。
乾いた笑いを零す臨也。
いつか壊れて消えてしまうのではないかと思ってしまう。
こんなに細い手首、
でもこいつだってちゃんと暖かいんだ。

繋がれた手と手。

ねえシズちゃん、と声をかけてくる臨也に俺は臨也の存在を確かめるようにやさしく手を握った。
すると臨也も答えるかのように握りかえしてくる。

(大丈夫だ。)

金色と漆黒は隣合わせでたくさんの人が行きかう池袋の渦に消えていった。




(20100129)

ダメだ!切ないものばっかりになってきた!
初、静雄視点の静臨^^
やっぱり臨也は儚い、不安定なイメージ



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