短編小説ログ | ナノ



自分の意識が浮き上がってくるのがわかる。
(あれ、いつの間にか寝てた?)
臨也は自分が少し硬いベッドの上だという事に気がついた。
重い瞼を持ち上げると、タバコのにおいが鼻につく。
そこでやっと臨也の頭の中で引っ掛かっていた疑問が形となる。

硬いベッド?
タバコのにおい?

臨也の家は新宿にある高級マンション。
ベッドがこんなに硬い訳がない。
タバコのにおいがする訳がない!


(あぁ、でも、)


でもなぜか安心するにおい。
このにおいは知っている。

これは、


「起きたか。」


シズちゃんのにおいだ。






「…えっと、」

もそもそと布団から体を出して、臨也は歯切れが悪く喋り始めた。
思い出せる範囲の事を必死にかき集める。

確か自分は仕事をしてた。そう、仕事はした。

それから。それからは暇だった。確か。
暇だったから池袋をウロウロしてた、よね?


「俺が帰ってきたら手前が寝てた。」

テーブルにカップラーメンを広げ、吸っていたタバコの煙をふぅと吐き、静雄は淡々と答えた。
声のトーンからして怒っている訳ではないようだ。
臨也はため息をついて、頭を抱えた。

「なんだよ、」

静雄は臨也の態度が気にくわなかったのか声をかけるが、臨也はそれどころではなかった。

――…恥ずかしい。

臨也は確かに静雄の家に押し掛けようとした。
だが家の主は不在で、面倒になって不法侵入。
ベッドでゴロゴロしていたのも事実だった。

(爆睡するなんて…!)

静雄が帰ってきた事にも気づかす臨也は眠り続けた。
静雄も静雄で確かに臨也が居る事に驚きはしたが、わざわざ起こすこともなかった。

否、あの安らかな寝顔を見て、起こせる訳がなかった。

臨也は頭を抱えたまま、顔をあげることなくまた布団に潜りはじめる。

「おい、」

「……なに、寝るんだけど。」

「寝るんだけど、って手前、それは俺のベッドだ」

布団から鼻より上だけを覗かせて臨也は答えた。
しゃねえなと、ふわりと金髪が目の前に広がったかと思えば、暖かいものがおでこに触れる。
目の前に広がる金色にクラクラするのは気のせいなのだろうか。

「―…シズちゃん」

「あ?」

がばりと勢いよく布団を被り、臨也は中で丸くなった。

「そこに居てくれる…?」

顔に熱がたまっていくのがわかる。
(こんなんで眠れるわけないじゃん。)


布団に残る静雄のにおいにドキドキが連なっていく。
けれどどこか安心するにおいに、臨也は静かに胸の鼓動が止むのを待った。


「…あぁ。手前が起きるまで居る。」


その言葉を聞いて、臨也は目を閉じた。


暖かな場所



(20100128)

付き合ってる設定の静臨。

甘くできただろうか…!
「キス」とか露骨に書けないチキンです、こんにちは。
臨也さんにデレて欲しかっただけさっ!
今度はシズちゃん視点とか書きたいなー!



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