短編小説ログ | ナノ


あの日も空は笑っていた
※来神時代


放課後に、喉が渇いてジュースを買った。
こくこくと喉を鳴らし、階段を上がって自分のクラスを目指す。
体育祭も文化祭も終わった10月。
部活も3年は全員引退し、放課後になると校舎に残る者は少なっていった。
吹く風は冷たく、流れる髪がふわりと舞う。
肌寒くなったものだと窓から外を眺めながら、歩を進める。
群青色だった空は綺麗な茜色に染まり、夕陽が美しかった。



(いつまで寝るんだろうねえ…)

教室に入ると、もう他の生徒の姿は無く、窓際の一番後ろ。その席に座る彼…平和島静雄だけが残っていた。
静雄は机に突っ伏し未だに夢の世界に居る。
確か7限あたりからずっとだった気がする、と臨也は思うが定かではない。

冷たいジュースをまた一口飲んで、寝ている静雄に近づいていく。
静雄は起きる気配は全くなく、突っ伏したままだ。

――…ふむ。
臨也は彼の1つ前の席に窓に背を向ける形で腰かけると、身体をに突っ伏す彼の机に肘を置く。

開いている窓から冷たい風が吹いた。

風で揺れた自身の髪と、静雄の金髪。

(あ…、)

じっと彼の金髪を見つめると、髪に絡まる小さなゴミに気がついた。

手を伸ばし、彼の毛先に触れようとする。
だが、同時に少し唸る声に手をひっこめてしまう。

何をどきどきしてるんだよ。

臨也は小さくため息をつきながら再度手を伸ばす。
触れる金色の髪の毛は痛んでいるくせに何故か柔らかく、手に馴染んだ。

風で揺れる髪は美しく、無心で指に絡みとけていく髪を撫でていた。

茜色の夕陽が教室内に射し込み、臨也と静雄の影をつくる。

「何やってんの、俺」

ありがとうシズちゃん、寝ててくれて。これからもぐっすりどうぞ。
ふと我に返り心の中で頭をさげて、特に何も入っていないカバンを手にとる。
中途半端に中身が残った缶を残し、そそくさと静雄を置いて教室から出ていった。


茜色の教室に静雄と缶だけが残される。

カタン、と小さく音が響き、静雄はゆっくり頭を上げた。
髪の毛をグシャグシャと雑に掻き、染まる頬が夕陽に隠れた。

「恥ずかしいやつ…」

残された缶を握り、喉を鳴らして一気に飲み干し、ゴミ箱へ投げ込む。
カランッと良い音をたてゴミ箱に収まる缶を見届け、静雄もまた何も入っていないカバンを手にとり、少し先を行く臨也の後を追った。

(20100917)

秋が来て欲しい、


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