短編小説ログ | ナノ



来ちゃった☆と満面の笑みで玄関からこんにちはをされて、俺は不覚にも固まっちまった。
今時「来ちゃった☆」なんざ聞かねえよ、テレビの見すぎだバカ野郎。



臨也は来たそうそう我が物顔で(俺の家にはソファーなんて豪華な物はねえから)ベッドに腰かけやがった。

珈琲が飲みたーい!と足をばたつかせ駄々をこねる臨也にため息をつく、が、珈琲を作ってやろうと腰を上げる俺はなんて優しいんだろうな。言っておくが珈琲は当然インスタントだ。

おらよ、と珈琲を差し出すと臨也は両手でそれを受けとる。
くそ、上目使いは反則だ。
俺は熱くなった気がした顔を背けて、ベッドに寄りかかるように床に座る。
隣座ればいいのにと小さく聞こえた気がしたか無視だ。

「あれ、香水?」

突発的に告げられ臨也はくんくんと俺の頭に鼻をつける。犬か。

「トムさんが、貰い物らしいがいらないからってよ」
「ふぅん」

臨也は口を尖らせながら呟き珈琲に口づける。
明らかに納得がいかねえ、っつか嫌だオーラでてるよな。
……だから両手でコップを持つな!可愛いんだよ!
しかもちびちび飲むんじゃ、

「シズちゃんの石鹸のにおい、すきだったのに」

語尾に「ぶぅ」とでも付くんじゃねえっかって程にごもごもと臨也は呟いた。
なんだこいつ、可愛いぞ。

「嫌かよ、この匂い」
「………嫌じゃ、ないけど」
「手前のにおい、俺は好きだな」
「なんで俺?」
「手前が香水つけってから、つけてみたくなったんだ。したらトムさんが丁度いい時に〜ってよ」
「そう、なんだ」
「そうなんだよ」

臨也はまだはっきりと納得した訳ではなさそうだが、また珈琲を飲んだ。
多分、トムさんから貰った、って辺りがひっかかってんだろうけどな。
これか女相手だったらもっとヤバかったかもしれねえけど。
そんな事を思いながら俺も珈琲に口をつけた、時だった。

「抗う事のできない、魅力溢れる、香り……だね」


…………あぶねえ、珈琲吹くとこだった。

「やっぱり知らなかったんだ。その香水のコンセプトだよ」

んなもん知るわきゃねえだろっ!!

「誘われてるのかと思っ」
「黙れ黙れ黙れ黙れっ!」

臨也の野郎、けろりと大変な事言ってんじゃねえよバカがっ!
全力で臨也の口を押さえ込むともがもがと騒いだもんだから何だと思ってたら鼻まで塞いじまってた。

「殺す気、かよ……!」
「わ、悪い」

だが手前が悪いんだ変な事言うからだ、くそっ

「反応が本当に童貞くんだよね、ピュアボー、」
「黙れよ臨也ァ…!」
「ちなみに俺のは“知的な色気に包まれる香り”だよ。ムラムラした?」
「ムラムラした」

「……………は?」

おい、珈琲溢すなよ。
あと顔がアホ面だ。やめろ。
ぽかんと開いた口が餌をねだる鯉みたいだな。

「あーあー、ムラムラしたなァ臨也くんよォ……つー訳でヤらせてくれるんだろ?あ?手前で童貞卒業した事を思い出させてくれよ」
「ちょ!冗談やめてよ!……………わかった!悪かったよ!」

とか素直に謝られてやめる訳がねえ。なあ、そうだろ?
誘われてるのかと思ったなんざ言われて黙ってる訳にはいかねえよなァ?
取り敢えず臨也からコップを奪い取りそのままベッドに押し倒す。
明らかに顔が引きつってる臨也は傑作だ。

「仕方ねえよ“知的な色気”に弱いんだよ俺は」
「取ってつけたように言い訳すんなっ!この単細胞!」
「まあ、取り敢えず……」




(貴方の香りに目がくらむ)



(20100520)

静雄・臨也の香水発売決定だそうで…!
本家さんの予約はすでに終了と聞き人気に恐怖してます(笑)
1個5000円だそうで……買わないんだろうなあ…私は。

シズちゃんは石鹸の香りだと思ってますが、いかがですか!
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