短編小説ログ | ナノ


※来神時代



どうしてこうなった。


いや、始めは俺のせい……いやいや俺よか臨也のせいだろどう考えても!

「シ、シズちゃん黙らないでってばぁ…!」

震えた声で悲願する臨也を俺はどうすればいい!
と、とりあえず肩を抱いて……だ、抱き締める、……??


***



「んで俺がこんな事しなきゃいけねえんだよ…」
「シズちゃんが色々壊すせいでしょー?むしろ俺が文句言いたい」
「元はと言えば手前がうぜえせいだろがよ!」
「うわ、まさかの責任転化?さいってー」

俺は臨也を殴ろうとしただけだというのに、臨也の野郎がちょろちょろ逃げるせいで………まあ、あれだ。
窓ガラス3枚と、傘数本と……あー数えたくねえ!
とりあえず壊しちまった!それは認める!
だけど俺がキレたのは臨也がおちょくるせいでだな…!
教師に言い訳した所で聞いてくれるはずもなく、荷物運びを罰として命じられた。
お前の力を発揮するいい機会だあ?うぜえうぜえうぜえ!!
だがまあ、教師は臨也にも非があると知ってか臨也にも荷物運びを命じた。
ざまあみろと俺は思ったが、良く考えろ。
一緒に荷物運び?笑えねえ冗談だよなあ?

だが教師は躊躇いもなく言いやがった。
「この荷物、化学準備室までよろしくな」
いやいやマジかよあり得ねえ。


「天気悪いし、早く帰りたかったのにさあ……」

うだうだ言う臨也は無視だ。確かに今日の天気は最悪だったけどな。
朝から大雨でまず学校自体に来たくなかった。
今じゃ雷も酷くて、校内全体が薄暗い。
床は滑って歩きずらいし、意外の荷物は重いしよ…!

「あーもう疲れた!」
「うっせえな、文句言うなら早く終わらせるぞ」

化学準備室なんざ来たことなかったが、意外と広いんだな。
多くの棚になんか良くわからん薬品が並んでて、いかにもって感じだ。
臨也はぐんぐん先に進んでいく。

「ねえ、ここら辺でいいのかな?」
「奥に置いとけっつてたしな」

俺は電気を付けてドアを閉めると、どことなく薬品の臭いがして嫌な気分になった。くせえ。
なんでは知らんがこの部屋には窓がないらしい。

荷物を置いて早く帰りてえ、とか思った矢先。

「うわっ!」

轟音が響いて、小さく臨也が悲鳴をあげた。
同時にブツン!と部屋が真っ暗になりやがった。

「……落ちた、のか?」

今の音と、この状況から雷が落ちた様だった。
めんどくせえ事になったな、早く帰りたかったのによ。
しかもこの部屋窓がねえから、マジで真っ暗―――…

「臨也?」

ドサドサッと明らかに何かが落ちた音が聞こえて耳を疑った。
おいおい、まさか手前持ってきた荷物ぶちまけたんじゃねえだろうな。
「おい、ノミ蟲、シカトこいてんじゃねえよ」
真っ暗のせいで臨也がどこに居るかもよくわからない。
臨也は黙ってやがるし、なんなんだよ。
あの良く喋る口はどこいった。
「……おい、臨」
耳を澄ますと止めどなく零れる、荒い息。
「どうした?」




「……こ、怖い」




「……は?」
「やばい、やばい…、」
「何だお前怖いとか……馬鹿にしてんのか?」
「やだ、やだぁ怖い、怖い……大丈夫、大丈夫、だいじょうぶっ……」

真っ暗で何も見えない中で、臨也の野郎は何度も怖い、嫌だと呟いている。
声は明らかに震えていて、演技には聞こえなかった。
あの野郎の事だから「なんてね!嘘に決まってるだろ?あれ。心配してくれちゃった??」とかほざき始めるのでは、とも思ったが、何度も深呼吸を繰り返し、大丈夫だと自分を落ち着かせようとしている声は本当っぽい。

(暗所恐怖症ってやつか…?)

停電は一向に復旧しそうになく、放課後のために色々遅れてるのかもしれねえ。
面倒くせえ事になった。
ドア閉めなきゃよかったな、なんて今さらながらに後悔したりして。
ドアを開ければ少しはましになるだろうが、本当に真っ暗、かつ初めて来たこの部屋の中を迂闊に動き回れない。
薬品を溢しても困る。窓が無いんだぞ?
つかなんで薬品保管してんのに窓がねえんだよ!

「くそっ、」
「し、しずちゃん居るよね…居るよね…?」
「居るに決まってんだろ」
「…どこ…しずちゃんどこだよぉ……」

あの野郎、涙声じゃねえか。

「本当に、怖ぇのか?」
「こ、怖くない。苦手なだけだよ……で、どこに居るの…?」
「強がんなよ、怖ぇんだろ?流石に真っ暗すぎて俺も怖いが、手探りでドア探して……」
「やだやだやだっ!シズちゃん行かないで!どこに居るのさ!」

やだぁ…!とか本当に泣きそうじゃねえか?
おいおい勘弁しろよ……。
俺はどうすればいいんだよ、これは。
臨也の野郎はどの辺に居た?
停電になる瞬間、臨也は確か……。

「な、なんで黙るんだよ!」
「わかったから待てよ、手前を探してんだから」

真っ暗の中を足元に気をつながら手前を探すのは大変なんだぞこの野郎。
行き場の無い手が寂し――…

「うっ!」
「し、しずちゃんだよね?しずちゃんの手だよね?」

何かに触れた瞬間、がっちり手を握られてビビッたなんて口が裂けても言えねえ。

(……にしても、)

震えてるとは、思わなかった。
しかも座り込んでるみたいだ。
そんなに怖いもんなのか。

「大丈夫か?」

優しく目を手で覆ってやる。
視覚があるから怖いんだよな、きっと。

「に、苦手なだけなんだって言ってんだろ…?」
「じゃあ俺のに重ねて手を置くな」
「う、うるさいな!握ってないと消えちゃいそうなんだよ!」
「意味わかんねえよ……」
「ま、真っ暗の中に吸い込まれちゃいそうなんだよ……、それがたまらなく怖いんだよ……」

(よくわかんねえが、要するに寄り添ってりゃ良いんだよな?)

いやコイツがよくわかんねえ奴なのは今さらか。
だが、こんな姿を見たのは初めてで。
少し、そうだ、ほんの少し。
可愛い面もあんじゃねえか、とか思った。

「な、なんで黙るんだよ!黙らないでよ…!」
「ま、こうしてりゃ良いか?」
「と、とりあえずは。あ、あと会話、しよう。難しいかもしれないけど、……お願い」
「臨也クンが“お願い”ねえ〜…」

いつもならここでキャンキャン喚くとこだが、やっぱり暗闇にやられてんな。
なんとなくシュン…としてないか?コイツ。

だから、調子が狂うんだよ、バカ臨也が。


「電気がつくまでな」




その後すぐに電気は復旧して、臨也の野郎の耳が赤かったのはきっと、あぁ、きっと、気のせい、だ。


芽生えたもの
(重なった手が、熱かったのも、きっと)



(20100507)

本当に暗所恐怖症方にスミマセンと土下座したいorz
私も軽い恐怖症ですけどね……あの真っ暗は本当に怖いよぉ……

だがしかし薬品保管してんのに窓がないとか無理やり設定がひどいwww
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