短編小説ログ | ナノ



あーもう面倒臭い本当に。

俺は人間が好きだ!
だけどね、俺は人間が好きだけどムカついたりする人間は少なからずいる。
そう。今だってある人間に面倒臭いと感じてるよ。


俺は早足で人の波を分けていく。
池袋は人が多くて好きだけど今はそう思わない、切実に。
だって走れないんだから!
(まだ付いてくるし…!)

「お、折原さん待ってくださいっ…!」

後ろから早足で俺を追ってくる中年男性の声に舌打ちをして、さらに速度を上げた。
折原さんっ!とまた名を呼ばれ、すれ違う人はこちらを振り返る。
あー本当に止めて欲しい。情報屋って裏家業だしあんまり目立ちたくないんだよね。いやシズちゃんとの好戦は仕方ないの。
つか、だから、







「スミマセン、そちらの気はありませんので」

自分でもオーケーを出せるほどの笑顔で俺は男にそう言った。
この笑顔で言われたらさすがに何も言えないだろう。よし。
さっさと帰ろうと身を翻した刹那、ガシリと腕を捕まれた。

「……あの、」
「そ、そそれでも俺は折原サンが……!!」

好きなんです、と顔を真っ赤にして言われても素直に気持ちが悪いとしか言えない。
中年男性、いや中年親父にそんな事を言われて喜ぶ折原臨也ではない。
あーコイツはバカな部類だったか。
あの笑顔で人が優しく断ってやったと言うのに引き下がらない。むしろ引き留めやがった。
くだらない情報な割に金の出は良いなあ、なんて思ったけどそっちの気があったとは。
新規さんだったから用心してマンションじゃなく外で取引して正解?
しかも会いたいがために多額の金を準備したと見える。

(安く見られたものだね)

こんなもの、金で買われたのと対して変わらないじゃないか。





そして冒頭に戻る訳だよ。
俺はそのまま親父を無視して池袋駅を目指している訳だけど、

「そこ動くなよノミ蟲ィイイィイ!!!!!」

呼ばれ慣れたニックネームにハッとなると、視界に自販機が迫り息を飲んだ。

あっ、やば……い?

だが自販機は大きく軌道を外し―――俺に向けられている訳ではないとわかった。
自販機は俺に付きまとっていた親父にクリーンヒットをかまし、親父の奇声と共に轟音を響かせ自販機は地へ落ちた。
当のシズちゃんは足を鳴らしてこちらに向かってくる。

「ねえシズちゃん。まさか今の奇声って」
「死んでねえ。死んでねえよ、多分」
「直撃だったけど…」
「手前に当てようとしたんだよ動くなっつったろ」

自販機が視界に入った時はさすがにビビったが、確実に俺を目掛けての行為ではなかった。
だとしたら、それは。

「助けてくれた訳?」
「んな訳ねえだろ、その口塞いでやろうか」
「ちゅーでなら」

俺を見下ろすシズちゃんを見上げると、案の定、目を何度も瞬かせていた。
なにそれ可愛い。

「……塞いで欲しいのかよ」
「ちゅーでならね」
「そっちの気、無いんだろ」
「そっちの気、ないの?」
「質問を質問で返すな」


どうしたものかと視線を流しガリガリと頭を掻くシズちゃんに、胸元を掴んでも届かないからちょっと背伸びをしてやると、観念したようにシズちゃんも此方を向いて――――、





(彼のキスはタバコ味)





(20100502)

GWにちなんだ何かとかにすればよかったと後悔してます\(^o^)/
甘い話ってわからん……全く甘いないよ……??
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