短編小説ログ | ナノ


(臨也単体パラレル?)
(ちょっと男×女えろシーン有)
(暗いお話)













殺してやりたい。

人生で初めてそう思った相手は父親だった。

俺には本気で好きになった、彼女が、居た。
親に初めて紹介したとき、2人共笑顔で迎えてくれて、それからちょくちょく彼女は俺の家に顔を出し、夕食を両親と一緒に食べた。

そう。ことの始まりは、彼女が俺の家に初めて泊まった時の事だった。
深夜に俺は目が覚めると、隣に彼女は居なかった。
トイレにでも行ったのかもしれない。あぁでもトイレの場所がわかるだろうか。
そう思って俺は布団から、ドアの前に立った時。

ありえない音を聴いた。


「あっ……ぃやぁ……ん、おりはら、さっ!あっ!」

聞き覚えのある、声だった。

「そこっ……やぁっ!イ、イッ……」
「声を、抑えなさい……皆が起きてしまうよ」


いつもの凛とした声ではなく、甘く甘美な声に俺は絶望を感じざるおえなかった。
そんな声、俺はしらない。

相手が誰かなんて、そんなもの考えたくは。
ハアハアとこもった声が漏れ、ギシギシとスプリングの軋む音に吐き気さえも感じた。

いつから。
いつから始まっていた。

彼女を紹介した時の笑顔は。
泊まってもいいかと聞いた時の、あの笑顔は了承の笑みではなかったのか。
どうして彼女は、こんな事を許している。
わからない、わからない。




俺は一体なんだ。









次の日の朝、彼女は何事も無かったかのように隣でスヤスヤと寝息をたてていた。
彼女を起こすと、眠たい目を擦り「おはよう」と笑った。
吐き気が、した。

リビングに行くと、母親が朝ごはんを準備していた。
俺と彼女の少し後に父親が「おはよう」と顔を出した。
彼女は笑顔で父親にあいさつを返し、父親もまた笑った。
吐き気が、治まらない。

母親の隣に父親が座り、父親の目の前に彼女が、座った。

楽しそうに広がる会話に、俺は入る事ができなかった。
ご飯の味なんてわかるわけがなかった。


それから何度も彼女は「またお泊まりしたいね」と笑顔を振り撒いた。
そして何度も、彼女は俺の彼女として折原家の敷居をまたぎ、俺の彼女としてではなく、父親の愛人として毎晩のように抱かれていた。

殺してやりたい。
死んでしまえ。
お前が居なければ。

何度も何度も呟いた。
あの腐った父親さえ居なければ、俺がこんな惨めな気持ちにならなくて済んだのに。
きもちわるいきもちわるいきもちわるい。
死んでしまえばいい。


また数日経つと、彼女は俺の許可なく家に上がり込むようになっていた。
「彼女、来てるわよ」
母親に言われる度に頭を鈍器で殴られたような衝撃と、胃の中から何かか戻る感覚が襲う。

「どうしたの臨也くん。最近元気がないわ」
心配する母親に、俺は真実を話した。
助けてよ、母さん。









殺してやりたい。

次に思ったのは母親にだった。

まだ俺は寝る事のできない夜を過ごしている。

あの時母親は俺が詰まる度に「大丈夫よ」と背中をさすってくれた。

だが。母親は言った。

「臨也くんが相談してくれてお母さん嬉しいわ。でもね、臨也くん。お父さんにも世間体ってものがあるわ。明日にお父さんと真剣に話し合うから、それで我慢してくれないかしら。お願いよ」


だが、当たり前のように明日からも彼女と父親の関係は終わらなかった。
俺は知っている、あれから母は父と会話などしていない。
話し合いなんて行われていない。


母親は彼女と父親との関係を知っていたんだ。

死んでしまえ。
死んでしまえ。
死んでしまえ。



殺してやりたくてたまらなかった。
でも俺は握りしめた包丁をアイツに、アイツ等に振り落とす事さえ、できなかった。
こんなにも憎くて、こんなにも辛くて、こんなにも殺したいのに。
包丁を握る手が震えて、絶えず息を吸っては吐いてを繰り返し、足がすくんだ。


殺せない――…なら。












『○月○×日正午、折原議員が息子の彼女と恋人関係にあるという――……』

テレビに映り出される自分の家を見て、たまらず笑いがこぼれた。
テレビに映る、必死にマスコミを押さえる母親。
今は膝を抱えて奥に引っ込んでいるであろう父親を想像するだけで笑いが止まらなかった。

ヒステリックに叫ぶ母親と、何も言わない父親。
崩れていく関係。
家族?両親?

なんてくだらない。
なんて、面白い。

なんて、醜いんだろう。





くしゃり、と握り潰した万札をゴミ箱に投げ捨てた。

「安っい、情報」



おれの「はじめて」

初めて売った情報は自分の―――………



(20100416)

名倉さんの「父親が彼女とできちゃって」セリフより妄想妄想!
あのセリフが本当だったら……な臨也の過去偽造

端から端まで全部嘘です(笑)

シズイザでも全くないぜイエー……すみません……

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