短編小説ログ | ナノ



やわらかいヴェールに包まれたかのような意識が浮上していく。
するとズキリと痛みを覚えた。痛い。なにこれー

同時に微かに揺れている感覚と、

(あったかい…)


人の温もりを感じた。



***




って、待てまてまてまて!

なぜ、どうして、わっつ?

うっすらと目を開けると飛び込んできた傷んだ金髪。
あーシズちゃんかあ、なんて思ったのもつかの間、あり得ない近さにあるシズちゃんの顔に心臓が止まるかとさえ思ったよね!

な、なんで俺おんぶなんてされるんだっけー!意味わかんない!いやいやなんで?!

幸いシズちゃんははまだ俺が目覚めた事に気づいていないみたいだし、黙々と(周りの風景からすると新宿かな)を練り歩いてるわけだけど…

つかなんで新宿?
さっきまで池袋に居なかったけ?
ああそうだよ池袋に居てシズちゃんに出くわして、そんで…


「なんだ手前、起きてんじゃねえか」
「うわっ!」

「…なんだようわって…」
「いやいや気にしないでよハハハッ…」


びっくりしたー
気づかれたよ、ハハハ。
つかシズちゃんってばこの状況はスルーですかそうですか。
俺が起きたの確認したら手離されて、地面に落とされると思ったのにおかしいなあ…うーん。
しかもこの帰路ってば情報屋さんのマンションだよね?間違いなくそうだよね?

「えっと、シズちゃん?」
「なんだ?」
「降ろして欲しいな、なんて?」
「駄目だ」

「あーそう、…」


なんでだよ!
なんで駄目なのってか駄目って何!
視線が痛いんだよ。なんのって?
そりゃすれ違うリーマンやら主婦やらあーもう見んなっ!
23にもなっておんぶされてるなんて俺がびっくりだよもう!
なんなんだよこれ…新手のイジメか?
シズちゃんの策略?マジで?
したらすげえダメージだわ。

あぁもう勘弁してよシズちゃん。


顔近いしさ。
あーやっぱりイケメンだねえ静雄さん。
首のラインとかやばいよ、なんかいい匂いするしさ。

ああもう、かっこよすぎ


「臨也」
「はははい、なんですか」
「なんだよその返事」
「いやびっくりしてさ…ハハ」


笑えねえよ、俺。
だってじっと見つめてたら突然シズちゃんこっち向くしさ!びっくりしたんだよ!ドキッとしたんだよ!ばーか!
…とりあえず落ち着こう、うん。


「で、なに?」

「その、…悪かった…」
「――…え?」


何のはなし?
いまいち掴めないんだけど…


「手加減、でくなくて。やりすぎた。ごめん」


…あーうん。
なんとなくわかった。
多分、あれだ。
池袋に行ってシズちゃんと喧嘩した時。
シズちゃんからくらった一発目が意外と効いてさ。
途中何回かシズちゃんの暴力を回避してたんだけど…結局ダウンしちゃったんだっけ?

わお。まさか。
だからおんぶしてくれてるのかな?びっくりだわ。


「足、大丈夫か?捻ってたみてえだから…」


ああうん。
シズちゃん暴力嫌いだもんね、知ってる。
あーでも駄目だよ。
駄目だよシズちゃん。


「ねーねーシズちゃん」
「なんだよ」

「結局はそれってさ」


折角おんぶされてるわけだし?
もうあんだけ色んな人に目撃されてんじゃ色々と今さらだし?
だからさ、ぎゅーってしてもいいよね。



「俺の事、大切に想ってくれてるって事だよね?」


小声で言っても聞こえてるよ静雄さーん?

当たり前だろって言葉、ちゃんと、聞こえてるよ。






帰ってイチャイチャしたいです




(20100331)

リア充はシズイザ。
なんか臨也さんが変態くさい(笑)

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