短編小説ログ | ナノ



来神時代






「…わっかんね、」
「なんでさ…」

暖かな光が差し込むお昼の時間。
この時期になると授業は午前中だけになり、13時ほどになると教室は誰も居なくなる。

ふと校庭に目線をやるといつもなら部活動に勤しむ生徒の姿があるが、今はテスト一週間前。
部活動も停止期間に入り、校舎は静けさに包まれる。
そんな中、家にも帰らず教室でテスト勉強をする二つの影。

静雄はシャーペンを投げ捨て、肘をついた。


「そこ、さっきも説明したよ。シズちゃん」
「わかんねえもんはわかんねえんだよ」
「進級かかってるんだろ?頑張りなよ」
「……ちっ」


一学期、二学期共にテストで赤点を叩き出した静雄は、今回の学年末テストで赤点をとれば進級ができない所まで追い込まれていた。

臨也がそんな静雄を見かねて「勉強、教えてあげようか」と持ち掛けると、静雄はあからさまに苦虫を噛み潰したような顔をしたが、臨也に常に定期テストで良い点を残している事を知っていたために「…頼む」とだけ答えた。

臨也は身を少し乗り出して、向かいにある静雄の机に近づく。


「はい。シズちゃん諦めないでよ。何がわかんないの?」
「ここの問題の解き方。何がわかんないのかもわかんねえ」
「…あー、これは公式に代入すればすぐ。シズちゃん公式覚えてる?つか覚えてって言ったよね?」
「…わかんね」

「………これは、階差数列。これは初項2の公差が…」
「あぁ?…さっきやった等差数列と何が違うんだよ」
「そう。これは、階差数列であり、等差数列でもあるんだ。…この数列の階差数列をとると、ここ。この数列では等差数列で考える事ができる。ね?」
「あー…本当だ」

「結局は等差数列として考える。違いは初項を足すってこと。階差数列ってのは…」


さらさらと書き込みをしつつ進める臨也の説明は、認めたくなかったがわかりやすかった。
再度シャーペンを取り、問題と向き合うと難なく解ける。

さっき言った等差数列だって、教わったばかりだったが頭の中に残ってる事実。

「臨也。」
「なにー?」
「手前、頭良いよな」


臨也は目を数回目を瞬かせた


「うっわ!今さらだね、シズちゃん。…シズちゃんもさー飲み込み早いし、頭悪いんじゃなくてただ授業聞いてないから解き方わかんないだけだよ。…ま、ちゃんと授業でてるシズちゃんとか気持ち悪いけど」


臨也だって毎回ちゃんと授業を出ている訳ではない。
だがここまで。他人に教えられるところまで内容を理解しているなんて、家で勉強しているか、本当に頭が良いのか。

カチカチと素早くシャーペンを押して、臨也は自分の問題に戻る。


長い睫毛のせいで影が落ちている。白い肌に、きれいな黒髪。
黙っていれば魅力的だが、コイツはやっぱり…


「なに?わかんないのでもある?」
「いや、」
「あ、まさか見とれてた?シズちゃんやらしぃー」
「……………」
「わお、まさかの図星?」

やっぱり、むかつく



昼下がり出来事

(留年、しないでね)
(おぅ、)

(一緒に進級、しよーね)




(20100317)

私が臨也に教わりたい…!
等差数列・階差数列については合ってるか不明←
来神高校って都立だったのかなあ…


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -