短編小説ログ | ナノ



来神時代の2人


「おりはら、いざや」
あの時、あの瞬間から出会わなければよかったなんて思えたら、どんだけ幸せだっただろうか。



ファーストコンタクト





風が冷たくストーブが必須な1月。
雪なんかも(積もるほどではないが)降ったりする季節に、高校はどうして体育に持久走なんてものをさせるのか。
静雄は屋上で仰向けになりながら空を眺めていた。

校庭ではちょうどその持久走が行われており、多くの学生が永遠とトラックを回っている。
くだらねえ、静雄はつぶやいて目を閉じた。
今日は比較的天気がいい。
寒いといっても午後ではそれなりに気温もあがり、日差しもあれば昼寝も可能だった。
屋上は絶好のサボりポイント。
第一にここは教師に見つからない。
飯食ってから永遠と走るなんざごめんだ。


「へいわじま、しずお、くん。」


意識を手放しそうになった矢先、空から声をかけられた。
なんとなく聞いたことのある声にため息をつき、静雄はゆっくりと目を開けた。

そこには、きれいな青空を隠すかのように漆黒が広がっていた。

「あ?」

何してんの?と赤い目が細くなる
こいつには見覚えがある、静雄は微かな記憶のかけらを寄せ集め、考えた。


「おりはら、いざや。」


確かそんな名前だったはずだ。
体育名簿を見たとき、読めなかったから覚えてる。


「あ、覚えてくれてるんだ、うれしいなあ」


臨也は相変わらず笑顔で、静雄の隣に腰掛けた。
今は体育の授業のはず。
静雄のクラスと臨也のクラスは違ったものの合同で体育を行っていた。
横目で臨也を盗み見るが、ただ前を見て天気いいねえなんて言っている。


「そういえば、いいの? 持久走。」
「一緒にサボってる手前に言われたくねえな、」
「興味ないんだ?持久走。俺は興味あるよ。」


疑問系で聞いてくる割に臨也は静雄の答えに興味を示してはいないようだった。
手前のことなんざ聞いてねえよ、静雄は思ったがどうせ言ってもこいつは聞かないんだろうとふみ、再度目を閉じた。
こいつもサボりなのだから、別に居ようと関係ない。
これが「ちゃんと体育出なきゃだめだよ!」なんていい出したならば話は別なのだが。

「だって楽しいじゃない。」

言ってることとやってることが違いすぎて不覚にも笑いそうになるのを静雄は押さえた。
だったら出ろよ持久走、静雄は思ったがまたその言葉を飲み込んだ。
なんで俺はコイツの話を聞こうとしてるんだ、授業は50分しかない。
寝る時間がどんどん減ってくじゃねえか。
静雄は無心を装い、硬く目をとじる。
臨也はそんな静雄を知ってか知らぬか淡々と続ける。


「どうして一人一人で持久力が違ってくるんだろうか、肺の動き、手足の振り方、呼吸法…いろいろなことが言われているけれど、実際はどうなんだろう。呼吸法だって人にあったものがあるだろうし、走り方なんて癖がある。あれだけの人が一度に走っていて、同じ走り方が見つからない!」


臨也は始めこそ普通だったが、語るにつれ熱がはいっていく。
気持ち悪ぃ奴、静雄は第一にそう思った。
聞く気などサラサラなかったのだが、臨也の異常な人への執着に目を疑う。
先ほどは視界の隅に入れた程度だったので、今度はちゃんと臨也の姿を確認する。
見た目に何の問題もない、むしろきれいといっても間違いではないだろう。
それがどうしてこうなった。
授業時間も残り10分程度だろう、静雄は関わりたくない一心で、その場を去ろう、そう決めた。


「ね、平和島静雄くん。」

ぐるんと突然こちらを見、目が合った。
赤い赤い、眼。
よくわからない感情が駆け巡る。


「君はどうかな? 人外れた力をもった君はさ。」


にこりと笑うそれに、俺はそういえば、とある事を思い出す。
最近教師のやつらも目をつけているとかいう生徒。
俺とは違った目のつけられ方をしている生徒がいるって話を。
静雄はむくりと立ち上がりながら臨也を一瞥した。
さっきの感情は、「イラだち」だ。
あの赤い目、あの目の色がムカつく。

「うぜえ。」
「なに?」
「手前の笑顔、殴りたくなっからやめろ。」


ただそう告げ、ドアノブに手をかける。
時間無駄にしたな、なんて思いながらドアノブを壊さないように気を配りながらまわすと、後ろから心底楽しそうな笑い声が聞こえた。

「見た目通り、むかつくなあホント!」

びきりと臨也の言葉にドアノブを握りつぶすそうになる。


「手前はよほど殴られてぇらしいなぁ?」
「まさか! ただ仲良くなりたいだけだよ、シズちゃん」
「シズっ……!!」


まさかの「シズちゃん」呼びに血管を浮かびあがり、自分でも制御できない「怒り」という感情があふれ出す。
強く拳を握り、振りかぶった。
臨也のむかつくニコニコ笑顔が一瞬消えうせ、ニタリと笑う。
殴った衝撃はなく、臨也の笑い声だけが響いた。


「仲良くしようね、シズちゃん。」


そう言って臨也は静雄が中途半端に開けた扉をわざとらしく大きな音を立てながら閉め、校舎の中へと消えた。
振りかぶってから振り下ろすまで、そんな時間はなかったはず、臨也は瞬時に静雄の背後をとったというのか。


「上等じゃねえか臨也くんよぉ…。」


おさまらない苛立ちを抱え、静雄はドアを蹴破った。

ぜってえあいつ、ぶっ殺す!

静雄の叫びは校舎全体に響き渡り、全生徒が背筋を凍らせている中、原因の彼はひっきりなしに笑顔だった。



(20100211)

明日が私の学校の持久走大会です^^
来神高校での妄想はたまらんですな!
ただフルネームで呼ばせあいしたかっただけなのですが!
今度は新羅も加えての高校話とか考えたいなあ


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