短編小説ログ | ナノ


シズちゃん出てきません
付き合ってる静臨



「なんで臨也がここにいるの。」

メガネをかけた白衣の男、岸谷新羅は部屋でくつろぐ黒い物体、もとい折原臨也の存在に驚いた。
今さっき帰宅したばかりだというのに、そこに居た臨也。
確かさっきドアには鍵がかかっていたはず。
昔馴染みだとしても不法侵入はいかがなものか。


「そんな事すると、もう怪我みてあげないよ、臨也。」
「それは困るなあ」


途中コンビニで買ってきたものをしまいながら臨也を注意するが、当の本人は全く悪気がないようだ。
ソファーに足を放り出し、あたかも自分の家かのような態度。
(セルティにも言って鍵を変えよう、うん。)


「で、何の用? その様子じゃ怪我ではなさそうだけど。」
「特に用はない。」


「―…は?」


我ながら気の抜けた声がでてしまった。
新羅はメガネの位置を直して、臨也を見た。
臨也は相変わらずソファーの上で仰向けになりナイフの調子をみている。


「え、何、情報屋って暇なの?」
「そんな訳ないだろ、情報はコロコロ変化するものなんだから。」


新羅はじゃあ仕事しなよ、と言おうとして、やめた。
臨也が忙しい事の方が恐ろしい。
裏で何かヤバい事を引っ張っているに違いないのだから。
その情報屋がここにいて暇をもて余してる方が全然平和なのだから。

――…平和?


「あ、じゃあ静雄とケンカしたとかー…」


あははと冗談混じりに言うと、臨也のナイフを弄っていた手が止まった。
(え、図星なの?)

「なんだよー痴話げ、」


トスッと壁に突き刺さったナイフ。
少し軌道が違えば顔に刺さっていただろう臨也のナイフ。
チラリと臨也の方を見ると、そりゃあもうドス黒いオーラを纏っていて。
静雄と何かがあったのは一目瞭然だった。


「い、いや、さすがにナイフわっていやそうじゃなくて、痴話喧嘩なんてそんなね、僕とセルティほどじゃないしね、っていやいやセルティと喧嘩なんてしないけどってそうじゃなくって!」

「…俺は、悪くない」


身ぶり手振りを加えて、限りなく機嫌の悪い臨也をなだめようとする新羅だったが、臨也の口から紡がれた俺じゃないという言葉は、とても弱々しく、今にも消えてしまいそうな声だった。


「それなのに! シズちゃんはさあ…!!」


臨也はドスッとソファーに一本ナイフを突き刺した。

――…訂正。
今にも消えてしまいそう?
いやいや、今にも爆発してしまいそう、だ。
臨也はそんな弱い人間ではなかった。


「本当に腹が立つなあ…! 少しからかっただけであれとか心狭すぎだろ、あの喧嘩人形…!」


なぜ喧嘩になったのかは良く理解できないが、静雄を怒らせたのは臨也のようだ。
新羅はまじまじと機嫌の悪い臨也を観察し、ふと言ってみた。


「素直になれないだけでしょ? 結局はさ」


ギロリと臨也に睨まれ少し息を飲む。
この距離でナイフを投げられたら確実に刺さる。
どこにって、もちろん僕の脳天だろうね。
背中に変な汗を感じつつ、「ね?」と負けじと臨也に聞く。


「素直になれって?」
「まあ…」
(素直な臨也も気持ち悪いか…)


素直な臨也を想像し、なんだかやるせない気分になった新羅は新たな策を考え始める。
そんな新羅とは裏腹に臨也は突然立ち上がり「帰る」と言い始めた。
新羅の止めも聞かず(止める必要があったのかは不明だが)臨也は嵐の様に去っていった。

何だったんだよ、と息をつくと、入れ替わりにセルティがPDAに「何かあったのか」と打ち込みながら入ってきたが、新羅は「幸せな家庭によくある問題、かな」と笑顔で答えた。



素直になれなんて

馬鹿げてる



恥ずかしいから、ムリ。
でも、仲直りはしたい…かも、ね。



(20100208)

喧嘩しちゃった静臨。

臨也は波江に八つ当たりするより新羅に八つ当たりしそうだなあ、という妄想。
波江さんだと「下らないわね」って言われそうだから(笑)

新羅のとこには静雄も来そう
あ、いや、静雄はセルティに相談するのかなあ…(知るか)

小説題名は確かに恋だったさまより頂きました!
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