我の三成がこんなに


「三成…?」
「刑部、刑部なのか!?」
道の真ん中で男が二人ひしと抱き合う様が人目を引かなかったと言えば嘘になるが、こんな場所で会えるとはだの元気にしておったかだのと言う再開を喜ぶその言葉と、頬を紅潮させ興奮を隠さない互いの態度に、周囲から向けられた視線はさほど痛々しいものでは無かった。
会いたかった会いたかったと一通りはしゃいだ後、時間があるのなら私の家に来ないかと誘ったのは三成の方で。
気ままな大学生活を送っており、ちょうど暇をもて余していた吉継は、二つ返事で彼の後を追い掛けたのだ。


そして、そのまま丸一日抱かれ続けた。

腰の痛みや体力を使い果たして疲弊した事よりも精神的な混乱が大きく、終わってから暫くベッドの上に突っ伏したままの体制から動けない。
真っ白だったシーツが生成りに汚れた事も、部屋に入った途端に挑まれた事に関しては良い。問題は回数と内容だ。
前の世でも三成とは身体を重ねる仲であったが、当時の彼は他の欲と同じくそちらも淡白で、月に数回、それも互いに一度ずつ達せば満足するような慎ましい行為であったのに。

それがどうしてこうなった。

未だ起き上がれず転がったままの己の隣で、買い置きしていたらしい冷凍のピラフをガツガツと掻き込んでいる三成をぼんやりと見つめながら、心中でそんな叫びを上げる。
事後処理もすっかり済んで、甘ったるい空気が霧散した頃、レトルトしか無いが何か食べるかと聞かれた時は疲れた身体を思わず起しかける程に驚いた。
あれだけ動けば腹が減るのは確かに道理なのだが、三成が自主的に食事を取るなど、いやその前に買い置きをしているなど。現世での両親は一体どんな真っ当な教育をと、思わず目頭が熱くなったのは前世でその件について散々苦労した吉継ならば仕方の無いことだろう。

「刑部。」
そんな吉継の思いを知ってか、三成は些か苦笑ぎみに口を開いた。
「これからは、私が貴様の世話をしてやる。あの頃のような苦労はさせない。」

何だかちょっと悔しくて淋しいような気持ちになり、吉継がスプーンに乗っていた最後の一口をエビごと食らってやったのは、どちらにとっても単なる第一歩。