鏡よ鏡


他人とは自分を映す鏡であると、昔、誰かが言っていた。

改めて言われずとも、自分が他人の目にどう映っているかなど解りきっている。
死に損ないの忌まわしい毒蛾。
この世に不幸と呪いを振り撒く鎧の怨霊。
好きなように呼べば良い、今さらその程度の戯れ言に痛める可愛げも持っていなければ、現状を打開しようとする向上心だって持ち合わせてはいない。

この身体を健常にしてくれるのならばと、思った事が無いと言えば嘘になる。
日毎夜毎に押し寄せる怨みの嵩に、自分が溺れて噎せ返り、碌に息も継げず何時の間にか一寸先の光すら見えなくなっていた。
ならばいっそ世界の全てが不幸になれと世を呪い、弱い者も馬鹿な者も、全部まとめて沼に沈んでしまえと卑屈な笑い声を上げる。

それでも、三成が居るので。

美しく気高く、疑う事を知らぬ彼の者を見ていると、まるで自分までそうであるかのような錯覚に陥り、三成と対峙しているその時だけは、自分がまるで一端の武人にでもなったような気がするので。

そう。例え自分の仕込んだ毒に、逆に侵され死ぬ日が来ようとも。




だから、主は、主だけは。