ゆりかご


三成のそれはいつも唐突で、彼の事なら何でも知っていると自負する吉継であっても、唯一その着火点だけは未だに見極めることが出来なかった。

あえて一つだけ言うのなら、時刻は日が落ちる夕暮れ時が多かったが、それとて全てではなく、時には早朝や昼間、夜中に訪れる事だって無い訳ではない。
一体何が彼をこうさせるのか。
とりとめもない事を考えながら、吉継は静かに自分を抱く友の姿を眺めていた。

病の所為か、それとも元からの性質なのかは知らないが、吉継は非常に快楽を感じにくい身体をしている。
その為、今まさに行われているように三成が自分を抱いたとしても、彼の分身からもたらされる溶けるような熱と、胎を全て埋められるような圧迫感を覚えるだけで、決定的な快感を拾う事が出来ない。
それでもこの美しい友に抱かれていると言う事実が吉継の心に甘露を落とすので、今までこの誘いを断ったことも抵抗したことも無く、三成の好きなように貪らせていた。

覆い被さってくる体温は、常はひんやりとしているのにこんな時だけ溶けるように熱い。

「吉継…。」
「あ……ふぅ。」

擦られるのも突かれるのも掻き回されるのも、さして気持ちが良いとは思わないのだが、これだけは別だ。
射抜くような瞳が責めるのは魂。
健やかな者の武器がその肉体なのならば、自分の武器は小さな頭蓋に詰まった知性である。人が肉体を侵されて快感を得るように、自分は理性と思考を愛しい男に凌辱されてこんなにも悦んでいた。


ああ、誘っているのはもしかして自分だったのかもしれない。

今更に気付くと、それに応えてくれている三成が更に可愛く思えて引き攣った笑い声を上げた。