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完全に気をやって目を剥いている吉継に気付いて、三成は慌てて脈を測りその頬を叩いた。
何度かそれを繰り返し、ようやっと気付いた吉継が目を開けて最初に見たものは、死ぬな刑部と情けなく眉を寄せる恋人の姿である。
溜め息の一つでも吐いてやろうと思ったが、生憎その体力にすら事欠くようで、唇から漏れたのは死に損ないに相応しい細く長い吐息だけだった。
代わりに呆れたような少し恨みがましいような視線を投げてやると、びくりと肩を跳ねさせて
身体を小さくさせる。

その間中、口癖のようになっている「許可しない」の言葉が三成から出る事は無かった。


「やれ、少しは加減を覚えろと何時も言っているであろ。」
漸く声を出せるまでに回復した瞬間、開口一番に放ったのはそんな言葉。
首を動かし自身の姿を眺めてみれば、包帯は解けて下肢は独特の臭いがする粘液でべったりと濡れている。
碌に動かぬ脚をもぞりと動かすと、その間からまた三成が放ったものが溢れ出て新たな染みを作った。
注がれた白濁は、布団の上に水溜まりを作る程零れたにも関わらず未だに吉継の胎を占有しており、録に食わぬ身体の一体どこからこんなにも沸き出て来るのかと呆れを通り越していっそ感心すらしてしまう。

戦に病にと常に死と隣り合わせな己ではあるが、流石に三成に貫かれて腹上死など死んでも死にきれない。
三成も流石に自分の行った無体は理解しているようで、叱られた子供そのままの態度をして拳を握ると、頭を垂れて謝罪を述べる。

「暫くは触れない。」
「ちと待ちやれ。」
服の裾でも引ければ僅かでも情緒があろうと言うのに、しかし清々しい程の全裸ではそれも出来ず、吉継は些か荒っぽく白い腕を握りしめた。
我慢すればする分だけ求めてしまうのだから、それならば少しずつ発散して溜め込まないようにすれば良いだけの事。それにどのみち。

「今度また我慢などされては、我の方が堪えられぬ。」
ぬしばかりがこうしたい訳では無いのよ、解るな?

言い聞かせてやれば三成の白い頬は一瞬で桃色に染まり、二人はゆっくりと寄り添った。