※がっつり出来上がってる


仕事の過程で酷く汚れたため、帰りに銀次と一緒に近くの銭湯に向かった所、そこは近隣では有名なハッテンサウナだったらしく一歩入った瞬間から獲物を狙う肉食獣のようなむくつけき男たちの視線を感じ、碌に温まりもせず命からがら逃げてきた。
と言う話をしたところ、赤屍蔵人の大爆笑などという滅多にお目にかかれない光景がリビングで繰り広げられ、愚痴のつもりで喋っていた蛮はその反応は何だと怒りに吼える事となった。

「ふざけんな笑い過ぎだろ。」
腹を抱え、息もまともに出来ずに蹲る男の後頭部をべしりと叩くが、赤屍はその話が余程ツボに入ったようで一通り笑い終わった後もまだ苦しそうに途切れ途切れの息をしている。
「新宿、で、サウナなんて。そうなるでしょう。」
「クソッ、その内お前も放り込んでやるからな。」
あの恐怖を味わえば良いと眼光も鋭く威嚇するが、恋情で脳の茹だった赤屍にはその様子がまるで毛を逆立てた猫のようにしか見えず、じゃれつく姿が可愛らしいという感想しか浮かばなかった。
蛮はさも恐ろしい事件だったかのように語るが、彼がこれまでにもっと酷い修羅場を幾つも潜っているのを知っているし、そもそも赤屍は根っからのゲイなので同性に言い寄られるという事にさほど忌避感が無いと言うのも蛮の恐怖を共有出来ない理由としては大きいだろう。
他にも言いたい事は色々あったのだが、あまりつつくと今度こそ蛮が激怒してしまいそうだったので、とりあえず穏便な言い訳でお断りする。
「私は刺青入れていますから、公衆浴場には入れませんよ。」
代わりに今度部屋に露天風呂が付いてる宿にでも行きましょうかと誘うと、話をすり替えるなとむすくれていたが幸いにもその提案自体が断られる事はなかった。