夜中にふと目が覚めて、三成は周囲を見回した。
夜中だ、と思ったのは初夏にも関わらず外が暗かったからで、寝起きの悪い己にしては珍しいこともあるものだとぼんやりした頭で考える。
枕元に置いてある水差しを取って口に運ぶと、からからに乾いた喉が潤って余計に目が冴えた。


隣では、眠る前に散々犯した情人が死んだように眠っている。
薄く上下する胸元からは、普段あれだけきっちりと巻かれている包帯は取り払われており、暗がりの中でも爛れた皮膚がうっすらと確認出来た。
手を伸ばしてその場所に触れると湿った感触が掌に伝わり、汗ばんでいるのかそれとも自分がねぶった跡なのだろうかと首を傾げる。
どちらにせよ、濡れた肌は体温を下げるから良くない。折角深く眠れているのを起こしてしまわぬように気を付けながら、乾いた手拭いをそっと身体に押し当てた。

決して明るいとは言えない夜だったが、目はどんどん暗闇に慣れ、気付けば吉継の細部までを余すことなく映すようになった。

薄くなった眉やひび割れた唇、抱いた時の苦し気な表情、今、この時の無防備に眠る姿、それは全部自分しか知らない姿で。

ああ自分はどうしようもなくこの人が愛しいと、いっそ呪いのような重苦しい息を吐いた。
その所為で沼に沈むなら、考えても仕方がない。