OhMyGod

暖かそうな布団の両側で、幸村と政宗は互いに真顔で正座をしていた。
二人は好敵手同士であると共に恋仲でもあり、今まさに大人の階段を上るべくこうして膝を付き合わせて向かい合っているのだ。
そして彼らは今困っている。男女ならば役割は自然と決まるものであるが、生憎自分達は男同士。閨事を行うとなると最終的にはどちらかが女役をせねばならず、しかし互いにどう切り出して良いものかとこうして落ち着き無く身をもじもじとさせている。

「その…。」
その先に沈黙を破ったのは幸村だった。
伏し目がちに自分の様子を伺う可愛らしい姿に、政宗は出来れば自分が男役に回りたいと言う気持ちを強めながらも大人しく相手の言葉を待つ。
「某が女役で構わないでござる。」
放たれたのは、意外な言葉だった。

「い、良いのか?」
「無論、本来ならば某とて男役がしとうござります。しかし…。」
聞いてしまってから、言質は取ったんだしそのまま押し倒しても良かったなと後悔したのは若さと言うべきか。しかし願ってもない申し出に、冷静になれなくなる程興奮したのは事実である。
幸村は膝に握った拳に力を入れ、至って真面目な顔をして政宗へと視線を移した。

「最中に『おぅいぇすかもん!』などと言われた日には某「Siiiiiit!!!!!」
しかし頑張って紡いでいた幸村の言葉は政宗の絶叫と投げられた枕に掻き消され、それまでの緊張した少し甘い空気はあっさりと霧散してしまった。

「言わねぇよ!!」
誰だコイツに洋モノなんか見せたのは、あの忍びかそれとも西軍連中の誰かなのか。
思わず頭を抱えてその場に突っ伏してしまった政宗はきっと悪くない。しかし、幸村はそんな彼の苦悩をちっとも知りはしない様子で眉を寄せた。当然と言えば当然だ、彼だって至って本気なのだから。
「いや……言うでござろう。」
改めて真顔で言われ、政宗の怒りは頂点に達する。売り言葉に買い言葉とはまさにこの事だ。

「じゃあ抱いてみろよぜってー言わねぇから!!」
「それで試してみてまんまと言われた時の某の気持ちも汲んで下され!」

ぎゃーぎゃーと言い合っていると、やがてその騒ぎを聞いた小十郎と佐助が駆けつけ、夜に騒いではいけませんとみっちり説教をされ、結局その日二人の念願は果たされなかった。