十九時現地集合


「それじゃあカンパーイ!」
大はしゃぎでグラスを打ち付け合う面々は既に大半が出来あがっており、赤ら顔で叫んだ佐助を先頭に元親や吉継などの飲兵衛は、両隣りの盃が少し空いただけでまぁまぁなどと言いながらその空白を透明の液体で満たしていく。
ちびちびと、しかしもりもりと減るのは酒だけではなく目前に並んだ肴も同じで、気付けば政宗の頼んだカプレーゼは彼が一口も口を付けぬままに消えており、元就の注文したもちピザは残り一切れとなっていた。後者は丸々一つ本人が消費したものであるが。

揚げ出し豆腐かと思って幸村が摘まんだものは、衣に包まれだし汁に浸ってはいたものの形状と弾力が明らかに予想と違っていた。
しかし一度箸を付けたものを再度戻すなどという行儀の悪い事が出来るわけも無く、また嫌いな食べ物にも見えなかったのでそのまま口に放り込み数度咀嚼した後、舌の上に広がった味に誰とはなしに問い掛ける。
「白子とは魚のどの部分でござったか。」
「ザーメンだぞ!」
その質問に元気よく、間髪いれず答えてくれたのは家康だった。
そのやり取りを家康の真横で聞いていた元親が、信じられないという表情で二人を見るが、残念ながらどちらも気にした様子は無く、家康などその口で自らも白子天ぷらを食べ始める。

「…テメェ等、そう言うのを何て言うか知ってるか。」
「食ザーだ!!」
セクハラって言うんですよと続く元親の代わりに何故か叫んだのは三成で、その言葉に佐助と官兵衛は大笑いして唯一政宗だけは悲しそうな視線を元親に向けた。

「何だ刑部、私は何か間違った事を言ったか。」
「いや、ぬしは、まこと聡い。」
大爆笑する周囲に三成は眉を寄せて吉継に尋ねる。しかしそう答える吉継も何かを堪えるように俯き、三成と目を合わせようとはしてくれない。きっと少し油断をしたら口から鼻から酒やツマミが出てきてしまったであろう。

三成が震える吉継に検討違いの心配をして背を擦っていると、明るい女の声と共に追加で注文していた酒と料理がやってきた。
「黒田殿!ビールが来たでござる!」
「やっとか!ビールだな?本当にビールだなもうウーロン茶は勘弁してくれよ!?」
三度目の正直で届いたアルコールに官兵衛が大喜びで手を伸ばすと、それを見た佐助と政宗が何の気なしに手拍子を始めて煽りだした。

「官兵衛さんのぉ!!」
「ちょっとイイ所見てみたい!!」
官兵衛もやっと届いたビールにテンションが上がったようで、促されるままジョッキを高々と掲げて立ち上がる。
これで彼も漸く百薬の長に口を付けることが出来る。


元就と吉継が言葉の後を引き継がなければ。
「「それ勃起!!勃起!!」」
「いや待て待て待て待て!!!」

一文字違いで大違い過ぎるコールに、またしても官兵衛の飲酒は遮られる。なぜじゃとお決まりの雄叫びを上げる余裕も無くしゃがみこみ、虐めっ子二人から隠れるように背を丸めてちびちびとビールを啜っていた。

その様子を見て大笑いしていた面々を余所に、三成が財布からおもむろにコンドームを取り出す。
いやお前何してんのと政宗が突っ込みを入れる暇も無く封を切ると、男性側と書かれている方に唇を付けて、ぷぅと息を吹き込んでいく。
みるみる膨れていく薄いゴムが適当な大きさになった所で、入り口を縛って風船のような体裁を整えた。

「イィィィィエェェェヤァァァスゥゥゥ!!!」
「熱血ぅぅぅ!!」

そうして瞬く間にコンドーム風船バレーが開催された。
「何でだよ!!いや本当に何だよこの流れ!!」
しかし政宗の必死の突っ込みも空しく、酔っ払い共は大盛り上がりでコンドームは机の上をいったり来たりしている。

「ベタベタする!」
「隙あり!」
元親が投げられた風船を思わず跳ね返した所で、表面にまぶされたローションにたじろいで腕を引いた。するとそれを認めた家康が再度元親に向けて緩いアタックを放つと、コンドームは元親の脇を抜けて着地した。

「三成よ、何故逆から膨らまさなんだ。」
「先端にゼリーが入っていると…。」
家康にポイントを取られてしまい悔しかったのだろうが、吉継の指摘する場所もおかしいし三成も三成で真面目に回答しているのがまた周囲の笑いを誘っている。


そうこうしている内に、今年も残り数時間である。