しねばいいのに

誰か自分を斬り捨ててはくれないかといつも思っているのに、誰もそうしてはくれなかった。
痛みが恐ろしい、他人が恐ろしい、責任が恐ろしい。
自分勝手ばかりしていると言う自覚はある。将としての責務を放り投げて食に走り戦から逃亡し、全てを部下に丸投げして自らはただただ迷い惑う。
その所為でいつも三成くんや毛利様にも怒られるのだけれど、彼らは怒って殴りはするけれど、決してその刀を抜く事は無い。
いっそのことその刀で切り刻んでくれればいいのにと、何時も思っていた。
そうすればもう怖くない。二人とも腕の良い武将だから、きっと痛みも無く死ねる筈だ。
けれど彼らは僕を苛める癖に殺してはくれなくて、だから僕は未だに恐怖に怯えている。

「金吾さん。」
慈しみの眼差しを投げ掛けてくれる彼だけが、どこまでも僕の事を気遣ってくれた。
「本当に辛くなったら、私が殺してあげますからね。」

ああ、だから貴方は優しい。