SS(檜佐木/'23.6.7-'23.10.9)
朝、目を覚ましたら隣にお前がいて、安心したように寝息を立てている。その寝顔をしばし眺めて、可愛いと零した。俺だけが許される、他の誰も見ることができないこいつの無防備な姿。嗚呼、俺だけの可愛い彼女。やっと手に入れたんだ。そう心の中で呟く、これが最近の俺の日課。
『・・・ん、檜佐木くん・・・?』
「起こしたか、悪いな・・・」
頬にかかった髪をさらりの退ければ口づけを落とした。その動作に目を覚ます。何をしたか察しがついたのか、頬を紅く染めて俺の胸へと顔を埋める。その一つ一つの仕草が可愛くて仕方がない。
「今更何を照れる、いつもしてるだろ」
『何回したって慣れないものは慣れないの』
照れ隠しにぐりぐりと額を胸板に押し付ける、それすらも愛おしい。滅却師襲来から余年。護廷十三隊に穴の空いた隊長格、復隊してくれた人たちまたは昇格した奴らのおかげで瀞霊廷は安寧を取り戻しつつあった。そして、六車隊長のおかげでようやく仕事が落ち着いた自分は休暇がもらえるようになったワケで。長年の片想いに気持ちを告げれば、互いに惹かれていたことがわかる。隊の中でも男性死神から人一倍人気のあった彼女。いつ誰にとられるかわからない状況でひやひやしていたのも懐かしい。相思相愛だとわかった暁には宴会を開いた程。やっとだ、やっと俺のものになった。
『・・・おはよう・・・』
「ああ、できれば顔見て言って欲しかったな」
まだ俺の胸へと預けてる顔、それも良いのだがお前の可愛い顔も見たい。贅沢だろうか、お前の瞳に俺を映してくれ。けれど、俺の問いかけにぐぬぬと唸る彼女。何を悩んでいるのか手に取るようにわかった。
『だって顔上げたらっ・・・』
「キスされるから、だろ」
『!』
ぴくりと肩を揺らした、驚いている。もう何度聞いたかわからない台詞。愛しい者に口づけを落とすことの何が悪い。愛する者に想いを伝えたい、愛を受け取って欲しいだけだ。
『・・・何も悪くないけど、恥ずかしいんだもん』
「その初心な反応もまた好きだけどな」
しかし顔が見たい。何もしないからこちらを向いてくれと言ったら素直に顔を上げた。やはり可愛い。俺しか見えないように、俺で埋め尽くしていっぱいにしてやりたい。彼女の大きな瞳に、自分が映る。穴が開くほど見つめればその瞳は他所にずれた。
『・・・見過ぎだよ、ばか』
「見るだけならタダだろ」
逸れた視線を良いことに俺の目線は下へとおちる。昨夜の情事を思い出す彼女の恰好。むき出しの肌は白く、ふくよかな胸が俺を誘う。あれだけ愛したにも関わらず俺の下半身は熱くなりそうだ。すると視線の先はシーツで隠された。
『どこ・・・見てんのよ』
「お前の乳房だ」
『変態』
その変態に愛されるお前は、昨夜俺の下で恍惚の表情を浮かべていただろう。艶やかな声も、快楽から身を捩るその姿も、全てが俺のもの。隠されたそれをもう一度見たかったが彼女の機嫌が斜めになるのでやめておく。その代わりに、顎を掴むとこちらを向かせた。
「キスしていいか?」
『・・・ずるいよ、檜佐木くん』
「ずるくて変態でも、好きだろ」
fin.
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