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お礼黒崎SS
平日の17時、毎回決まって神社の鳥居に向かう。だって、そこなら貴方に会えるから。気分が上がってスキップなんてしてしまう。幽霊は足がないというのは人間の思い込みだ。ちゃんと足で立って歩いてスキップできるもの。
「何だよ、随分とご機嫌だな」
『黒崎くん!もう来てたんだ!』
学生服を身に纏い、ダルそうに抱えた鞄。学校帰りに通る道、私に気付くと毎回声を掛けてくれる。少しだけ立ち止まって片手に摘まれた花を差し出された。これ好きなんだろ、と。
『なんだか悪いね、いつもありがとう』
「悪いって思ってんなら、早く魂葬させろよ」
『・・・そ・・・そうなんだけどさ・・・』
誤魔化しながら受け取った花を花瓶に生ける。一か月前、私は死んだ。交通事故、居眠り運転のトラックに轢かれて即死だったらしい。一瞬にして意識を失ったから正直痛みもなかったし、死んだ実感も沸かない。両親の泣き叫ぶ声だけが耳の奥に残っている。
「その内死神が来ちまうぞ、知らねー奴より顔見知りの俺に魂葬される方がまだいいだろ」
『顔見知りなんて他人行儀な!クラスメイトって言ってよ』
「・・・・・・あんま変わんねえだろ」
空座一高、一年三組。高校に入学して早々彼に一目惚れをした。眩いオレンジ色の頭に特徴的なたれ目、恥ずかしくてまともに話したこともなかったし、顔も見れない。一日が終わり、黒崎くんと今日も話せなかったなーと一人反省会をしながら帰っていたら運悪く轢かれ死んでしまったんだ。私の人生ここで終わった、好きな人と会話もできないまま終わったと。それから一週間、路頭に迷い成仏の仕方もわからない。天使か誰かが迎えに来てくれるのかなと思っていたら変な化け物に襲われた。死んで尚襲われるってどういうことだろう。自分の運はどこまでもないのか、そう思っていたら黒崎くんが現れたんだ。黒い袴姿に草履を履いて大きな刀を振り回していた。化け物を退治すると大丈夫か、と手を差し出してきてくれた時のことは今でも忘れない。
『そんなに早く成仏してほしいの?』
「あ・・・いや、そういうワケじゃねえけど・・・」
片思いをしていた相手に助けられたんだ、これはもう運命しか感じない。そう思った瞬間に、自分は死んでいたのだと思い出す。死んで運命感じたっていいじゃない、そう思えるほど私の心は広くなかった。差し出された手をどきどきしながら掴んだら力強く立たせてくれる。彼の姿は死神というらしい、襲われたのは虚、死神代行をしていて斬魄刀で魂葬すると言われた。急に好きな人が現れて意味わからないことをたくさん言われたせいでパニックになる。落ち着いてからでいいよ、とその日は帰ってくれた。
『それに急がなくていいって言ったの黒崎くんじゃん』
「そりゃそうだけどよ・・・もうあれからひと月くらい経つぜ。そろそろ魂葬しねえと、俺が業務怠慢って怒られるかもしんねえ」
「業務怠慢って・・・お給料発生してるの?」
あの世の口座に入ってるみたい、と言った彼。あの世の口座・・・向こうの世界にも口座があるんだ。っていうかみたいってだけで確認してないんだね。未だに信じられない、死神ってガイコツがローブを着て大きな鎌を持ってるイメージ。いくらぐらい入ってんのかな、と呟きながら何かを数えて指を折っている。その何気ない仕草すらかっこいい。生きてる時は告白する勇気はなかった、死んでから仲良くなったって意味がないのに。でも、きっと成仏したらもう会えなくなる。だから魂葬しないでくれって頼んでるのに。彼の迷惑になるんじゃ、仕方ないか。
『いいよ、覚悟したから。魂葬ってやつしてくれない?』
「え・・・・・・何か、無理矢理させた感あるな。悪りィ」
彼は鞄を置いて、キャンディーを飲み込むと死神化した。黒い服を着て大刀を背負っている。助けてくれたあの日と同じ姿だ。制服姿の黒崎くんは「都合よく使うなっつーの」と愚痴垂れながらこちらを見る。私の姿、幽霊の姿を見て魂葬と察したのかすぐに口を噤んだ。柄の底を額に軽く当てられる。すると体が光って、嗚呼もうこの世とは別れるんだと理解した。私という存在が洗われる今、心の中も洗ってしまいたいと、そう思った。
『黒崎くんに助けてもらえてよかった。最後にお話しできたのが黒崎くんで良かった。ずっと、ずっと・・・』
ずっと、大好きでした。精一杯の笑顔でお別れを。視界が消えゆく中、目を見開き驚く彼の顔が映っていた。さようなら、来世でもまた黒崎くんに会いたいな。そう願って意識を手放したのに、あの世に着くと何故か黒崎くんが待っていた。
言い逃げなんてずりィだろ?
fin.