(夜天と彩乃)
彩乃先輩に恋するだなんて、馬鹿なことをした。好きになってしまったものは仕方ないけれど、もし時間を巻き戻せるとしたら、俺は別のひとに恋をしたい。──いや、それは無理か。何度後悔しても、もうやめようと思っても、きっとどのみち俺は彩乃先輩を好きにならずにはいられないのだ。
一年の壁は、低いように見えて案外高い。あのひとは先輩で、俺は後輩。どんなに仲良くなろうとも、それは埋めることのできない差なのだ。気持ちを伝えようと思っても、その壁が邪魔をする。俺はまだあのひとの“後輩”だ。大勢いる後輩の中の一部。どんなにもがいても“恋人”にはなれない。
年の差なんて欲しくなかった。あと一年早く産まれたかった。そうしたらもっと一緒にいられたのに。彩乃先輩じゃなかったら、こんなに苦しい思いはしなくて済んだんだろう、きっと。
「先輩、ご卒業おめでとうございます」
彩乃先輩のいない残りの一年を俺はどうやって過ごせばいいのか、その答えはまだ見つからない。
うつくしいさよならの仕方を教えて欲しい
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アメジスト少年120308 蛍