世界の中心で
「本当に世界の中心……。ボクたちが向かっているところに が探してる人がいるんだね?」
「はい。そこに私を生み出した人がいます」
世界の中心に世界樹たる大樹がある。ミトスたちはそこへ向かっていた。精霊の長たるオリジンとの契約。それがミトスたちにとある情報を与えていた。
大樹が枯れかけていると。
大樹が枯れればマナは生み出されなくなり、大地もその上に息づく生命もすべては滅びるだろう。それをさせないためにミトスたちは戦争を止めるより先に世界の中心に向かっていた。
「大樹の番人でもやってるのかな?」
「会えばわかるかと」
「それがわかっていたから、ユニコーンは を連れて行ってくれって頼んだんだね」
現在大樹周辺はマナを求める人間たちを通さないように結界が張られていた。それを通るために各精霊との契約が必要だったのだが、ミトスたちはすでにそれを終えている。
否、いま世界の中心に入れる存在は、精霊たちと契約しているミトスとその仲間たちが唯一だろう。精霊は一人しか契約者を持たないものなのだから。
「このエターナルソードで世界の中心――大樹のところに行ける。そしてそこに行けば世界を救える方法がわかるんだ。行こう、みんな!」
「ええ」
「ああ」
ミトスの声に応えるのはマーテルとユアンの二人。
「……クラトス。どうしたのですか?」
応えなかったクラトスから考え込む気配が伝わってきて、少女は顔を上げた。
「 」
「はい?」
「……いや、何でもない。行くぞ」
腕を引かれるままにクラトスと共に歩き出す。
「…………ごめんなさい」
伝わってくるぬくもりに少女はぽつりとつぶやいた。それがクラトスには聞こえないだろうと確信しながら。
ミトスたちとの旅が始まった時からわかっていた。誰がどういった選択肢をとろうとも、少女に待つ運命はひとつ。
それが少女の生み出された理由。少女の役割なのだから。
「…………」
世界の中心、マナを生む大樹のある場所。そこで少女の旅は終わる。
(At the center of the world)
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