She is the last person


(綱吉視点)






昨日、彼女が使用人の仕事を買って出た。
俺が少しでも手伝おうとすると

「私の仕事です。手を出さないでください」

そういって手伝うことは許されなかった。



とはいっても彼女はいままで
そういった仕事はしてこなかったようで
床を拭いてはバケツをこぼし、
またそれを拭いてはこぼし・・・

正直見ていられなかったけど
俺が手伝おうとすると怒られるし・・・。




なんて思っていると今度は
脚立に上って棚の上を拭こうとしているようだ。
危なっかしいなあなんて思いながら
影から見ているとふわりと窓から風が吹く。



「きゃ、」

「あ」



運がよかったのか悪かったのか・・・




ユウがはいていたのはスカートだった。




彼女はスカートを抑えて回りを見渡しながら
脚立から降りて俺を見つけたようで
ズイズイとこちらに近づいてきた。



「沢田さん?」

「な、なに?」

「見たでしょ」

「いや?!見てない見てない!!」

「嘘。」



するとユウはハンカチを取り出して
俺の顔面に投げつけた。



「なにすんだよ・・・あ。」




顔に張り付いたハンカチをはがすと
白い布の真ん中に真っ赤な日の丸。



「変態・・・!」

「ち、ちが、誤解だよー!!」



変態とはきすてて、はユウ走り去ってしまった。





俺は鼻血をぬぐいながらしゃがみこんでため息をついた
そんな俺の方をポンとたたかれ振り返ると
そこにはクロームが悲しそうにこちらを見ていた。



「ボス、謝ったほうがいいよ」

「そ、そうだね」



きっと一部始終見ていただろう。


恥ずかしい。
















彼女を探して裏庭に行くと
庭の薔薇を愛おしそうにながめている彼女をみつけた。
声をかけるのを戸惑うほど
風になびく髪と、憂いを帯びた横顔に見とれてしまった。

「ユウ、」

「私のファミリーの名前は薔薇から来ているんです。」


声をかけるとぽつりぽつりと口を開いた。



「私のボスも薔薇が好きでした。だから私も、好きでした。」

「ユウ・・・」

「薔薇が、家族が、大好きでした・・・!」




元気に振舞っていても、まだ心の傷はいえることはないだろう。
初めて人を殺した日、初めてのファミリーを失い、
たった一人でファミリーを背負うボスになる。
とても俺には癒せきれはしないだろう。

でも



「これからは俺たちがいる。」

「沢田さん、」


ユウのまえにしゃがみこみ、氷のようにつめたい細い手を握る。


「これからは、俺たちを頼ってよ。
すぐに慣れろとはいわない。でもいつか、
本当の家族みたいになることができたら幸せじゃないかな?」

「・・・家族」

「まあ、こんなボスじゃあ頼りないかもしれないけどさ!ハハ」



ズズッとユウは鼻をすすると
二カッと笑い俺の手を握り返した。

いつのまにか冷たかった手は暖かくなっていた。




「ありがとうございます!でもレディのスカートを覗いたことは
みんなにいいふらしておきますからね!」

「え!ちょっと待ってよ!それだけはー!」




けらけらと笑いながら光の速さでユウは去っていった。






【She is the last person to love me.】
彼女は僕を愛してくれそうにない。



          まだ、ね。









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