starry☆sky | ナノ
1年生のころからいつも夜久さんと比べられてた。
たしかに醜い嫉妬心が生まれたこともあったけど、すぐに萎んだ。
なんたって夜久さんは可愛いし、優しいし、素敵な人だから。
だから比べられるのが嫌だったわたしは朝はぎりぎり、お昼は一人屋上庭園の隅で食べて終礼とともに寮に直行という生活スタイルだったから、夜久さんと、むしろほとんどの人と喋らないままに1年を過ごしていた。
でもはじめてできた好きな人に勇気を出して弓道部に入部したけれど、この想いはすぐに玉砕。
「名前ちゃん?大丈夫?肩、痛くない??」
「あ、夜久さん…うん、大丈夫」
「名字、無理はよくない、少し休め」
「はい…」
入部して一週間。
むしろはじめての弓道に苦戦してそれどころじゃなかった。木ノ瀬くんともまだ一言も話してないし。
「少し、外の空気を吸ってきますね」
わたしは引きつった笑顔のまま、道場を出た。
「はぁ、全然ダメだなぁ…」
「なーにがダメなんだよ?」
グラウンドが見渡せる階段に腰掛けてため息をつくと、犬飼くんに不意に話しかけられた。
「い、犬飼くん!」
「最近元気ねーな?どうかしたか」
「な、何もないよ」
犬飼くんはわたしの横に座ってバンっとわたしの背中をたたいた。
「何もない、って顔じゃねーぞ!話してみろって!話せば楽になるんじゃねーの?」
「……」
わたし…
「わたし…皆が一生懸命教えてくれても全然成長しないし…部員とも、人見知りで全然話せないし…弓道、向いてないかも」
「…うーん。俺はそうは思わねえよ。ってか、お前は頑張ってんじゃん」
「犬飼くん…」
「お前はお前のやり方で頑張ればいいんだよ!」
「…うん」
「それに、木ノ瀬とも頑張れよ」
少し出てきた涙を拭いながら頷くと、犬飼くんは急に意地悪な顔になって言った。
「な、!!何で知ってるの!?」
「インドアという噂で有名なお前が急に弓道部に入ったと思ったら木ノ瀬ばっかり見てんだもんな。そりゃ、わかるわ」
「え!え!みんな知ってるのかな!?」
「大丈夫だ。生憎うちには鈍い奴しかいない」
「……」
「ま、 何かあったら俺に言えよ」
「…うん、ありがとう犬飼くん!元気出たよ!」
私のやり方。
私なりのやり方で頑張っていけばいいんだ。
「お前、笑顔のが可愛いぜ」
「ば、ばかっ!」
「陽日先生!!」