小説 | ナノ






無自覚彼女









のどやかなお昼時。


教室の窓からは涼しい風が入ってくる。







「ユウってさ…何でユウなんだろーね」



「「「は?」」」







当の本人含め、アレンとラビも可笑しな声を出す。



リナリーは委員会へ行っていた。







「何だよいきなり」



「いやだってさ、何でカタカナなのかな〜って」



「あぁ、そういう事ですか」



「ユウのままんはどういう意味をこめてユウにしたのだろうか…うむ、興味深い」



「誰さ、お前」



「知るか」



「"優"ですかね?…ぷ」



「オイてめぇ何で笑うんだそこで」



「えー!それはない!だって今のユウに当てはまってないじゃん!」



「もし"優"なら今頃お袋さん泣いてるさ」



「てめぇ等…」



「じゃあ〜…"勇"とか?」



「ぷー!この顔と態度で"勇"なんて!面白すぎです神田」



「だから何で笑ってんだよコラ、つかヤメロ」



「ん〜じゃあ"悠"?」



「(無視か)」



「無難な線ですけど…」



「でもなんかそんな…ねえ?」



「そうさねぇ…何かこんな自由に大空を羽ばたいてますって感じじゃねぇさ」



「むしろ地面に這いつくばってる感じですよ」



「あはははは!言えてる言えてる!」



「言えてねぇよ。つか人の名前で盛り上がるな」



「ん〜…じゃあ"雄"ですかね?」



「(また無視か)」








神田は少しいじけて(いじけてねぇよ)昼御飯をぱくぱくと食べだす。





3人のお箸は未だ停止中。




「えー!そんなオス臭い感じでもないでしょー」



「(オス臭いって何だよ)」






やっぱり少し寂しいのか(寂しくねぇよ)会話は耳に入れて心で突っ込む。






「いやいやわかりませんよ。生まれたての頃はオス臭かったのかも」



「そうさね〜ユウも男の子だし」



「いやないでしょ!昔の写真なんか女だよ女!じゃあ"友"!」



「(見たことねぇだろ)」



「ふふふ。名前、冗談は顔だけにして下さいよ」



「ははは。そうさ、その漢字は1番いかんさ」



「えへへ。そうだよね、やっぱり。ってかアレン今軽く酷いこと言ったよね、ね、ね」



「もうこの際何でもいいですよ」



「じゃあ適当に辞書引いてみよ」



「アレンさん、無視?無視?」



「"幽"?"誘"?」



「"猶"?"融"?」



「…………」



「"憂"?」



「"祐"?」



「……神田さん」



「な、なんだよ」








自分の制服の裾をくいくいと引っ張る名前。








「"蚰"?」



「それもはや読めねー」






「無視されたー」








ちょっと頬を膨らませて言いながら神田の横に座る。



何だか…可愛い。







アレンとラビは未だ辞書とにらめっこ。








「ユウは…ユウでいいよ」



「ああ」



「てかユウがいいよ」



「ああ」



「だってユウはユウだもん」



「ああ」



「ユウ、ウインナーちょうだい」



「ああ」



「優しい。時に優しいユウが大好き」









ぼっ!と紅くなる神田。










「な//お…俺…も…お、お前」



「あ、"優"だね」



「…は//?」



「優しいから"優"!まぁユウだけど」



「い…意味わかんね(うわ、ほんとこいつ…や、やば)」


「?」







癖なのか、上目遣いの名前。



神田は瞬殺。

いつも惚れ惚れ。






そんな神田に気づかない。



自分の可愛さに気づかない。



無自覚な彼女。











「優でも雄でもユウでも大好きだもん」



「…//」








ラブラブな2人。


いつまでもー…。














「これどうですか?」



「いや、だから読めねえって」


siori