小説 | ナノ






僕のシンデレラ









綺麗な黒髪に漆黒の大きな瞳。


細身の体に高くない身長。


向日葵のような笑顔に柔らかい声。




全部、全部、大好きです。




僕のシンデレラ





「アレン〜?また名前見てんさ?」


「あ、ラビ。今日こそは僕、告白しようと思うんです」


「まじ?」


「つかお前、それで7回目じゃねぇか。ほんとに出来んのかよ」


「う…でも、今日はほんとに頑張ります!」





とは言ったものの、名無しはいつも友達といる。その中に入り込んで名無しだけを呼ぶ勇気はない。

僕は話す機会があれば…と思いながら手を洗っていた。

すると後ろから名前を呼ばれる。振り替えるとそこには僕の想い人の名前がうつむきがちに立っていた。



今しかない…



心の中からそう聞こえてきた。





「あの…「あのねアレン君…」」





勇気を振り絞って出した言葉を名無しに遮られる。





「あのね…私、引っ越しするの」


「…え」





信じられない。


あまりに唐突なことに言葉を失う。意気込んでいた気持ちがすーと腹の下へ堕ちていく。



"君が好きです"



こんな時にそんな事…。

僕は言えるほどタフじゃない。





結局何も言えずに今日は終わった。


また言えなかったのか、と神田に言われたがもう、そんな事はどうでもよかった。



むしろもう…伝えないほうがいい。


そう思っていた。









名前の引っ越しの事は次の日の金曜日、クラスでも発表された。明後日の日曜日にはもう、この街を出るらしい。




前から引っ越しする事を知っていた名前の友人達はプレゼントや寄せ書きを書いた色紙を1人1人渡していた。


名前はそれを涙を流して受け取っていた。



僕はそんな名前も、もらい泣きした名前の友人たちを見るでもなく外をぼんやりと眺めていた。


それでも何故か僕は泣きそうで、出てきそうな涙を必死で堪えていた。


そして出発の日曜日。



伝えたい。



でも僕は、この伝えたい気持ちを抑えて泣かないで絶対に送る。


もう会えないかも知れない。
それなら気持ちを伝えたって…どうせ。



そう思い夕方、名前の家まで行った。





名無しはもう車に乗っていて僕に気付くと窓を開けた。





「ア、アレン君!お見送りに来てくれたの?」


「当たり前ですよ、友達でしょ?」


「…そうだね、うん。ありがとう」





友達。

自分で言っておいて少し傷つく。

でも、伝えない。伝えちゃならないんだ。



すこし沈黙があって名前が悲しそうに言う。





「もう、行かなきゃ…」


「あ、はい。すみません、引き留めちゃって…」


「ううん、嬉しかったよ。ありがとう!……ばいばいっ」





小さく手を降って窓から出していた顔を引っ込めて僕から見えなくなる。


車はゆっくりと動き出した。




その時、


ばっと名前が窓から顔を出して大きく手を振りながら叫んだ。





「ずっと…ずっと私忘れないよっ!」





涙を流しながら言う名前。どんどんと距離が離れていく。




涙が出そうになった。

そして僕も叫んでいた。





「僕も!僕も忘れませんっ!」





その言葉を聞いてにっこり微笑む名前。





遠くなる影。


車の進む先で滲むオレンジ。








あぁ。



僕はこんな事を言いたくてここにいるわけじゃないんだ。





僕は…




僕は……








抑えられない想いが溢れ出して、もう遠くに見える車を追いかけて僕は走り出した。







「名前ーっ!君がっ、君が好きですっ!ずっと前から君がっ…!」






「名前が大好きですっ!」






死に物狂いで叫んだ。


もう車は遠くにあって名前がまだ顔を出しているかどうかもわからない。







伝わったのかな…。






うん。でもいいや。

伝わっても伝わってなくても。



きっとまた会えるんです。






また会える日に、

もう一度言いましょう。


きっと、いつか。










END



謎ですね。
ほんと謎な小説です。

アレンって難しい!
まだまだへたっぴですがここまで読んで下さってありがとうございました!


この小説はテゴマスの僕のシンデレラを元にして書きました。

まぁ食い違うところはありますが。



siori