crying cat | ナノ


とある日のバイトの休憩時間、携帯を開いたら龍之介からメールが入っていた。『今日は大人数で来るかもしれん』という、用件オンリーのメールに苦笑した。それをどうしろって言うんだ。私が担当するかも分からないのに。席を取っておける訳でもないし。そう思いながら了解と返信しておいた。


「いらっしゃいま…って、本当に大人数だね」

「む、すまない」


ドアが開けられた音で出てみれば龍之介だった。そして仲間だと思われる人がわらわら。人数を聞けば7人らしい。なんでも部活仲間がみんなで行こうと言い出したらしい。幸い、今日はお客様が少なめだから3人と4人に分かれるが隣同士で席が取れる。

人数を一応確認していたら、パチリと女の子と目が合った。え、女の子?思いもしなかった存在に驚いた。
龍之介の話では学校に女の子は1人しかいないと聞いた。でも、まさかその女の子が龍之介と知り合いだったなんて。同じ学年とは聞いていたが、同じ部活だとは思わなかった。
女の子がいない学校と聞いていて安心していたのに。胸がチクリと針で刺された気分になった。


「おぉー、この子が宮地の幼なじみか」

「なんだよ、なんでこんな可愛い子を隠してたんだ!」

「いや、隠してはな…」


席へご案内して、水とおしぼりを運んだら少し癖毛の黒髪と緑の髪の子が言ってきた。白鳥くんと犬飼くんと言うらしい。自分から名乗ってきたので私も曖昧に名字ですと言っておいた。


「龍之介がいつもお世話になっております。」

「おい」

「宮地をいつもお世話してますー」

「白鳥!」

「本当、宮地先輩の堅物っぷりに振り回されてますよ」

「木ノ瀬ー!」

「店ではお静かに」


どうやら部活内では龍之介はいじられポジションのようだ。白鳥くんと木ノ瀬くんとやらの言葉に掴みかかる龍之介を煩いと言えばムッとした顔で謝られた。いつもムッとした顔か。
最終的には落ち着いた振る舞いの多分部長らしき人がみんなをまとめ、注文をしてくれた。

注文の確認を取り、いつも通りの言葉で中へ下がる時、龍之介の隣に座る女の子が目に入った。可愛らしいお人形さんみたいな子。こんな子が弓道をするなんて想像付かないや。
隣の龍之介と楽しそうに話す姿に胸が締め付けられる思いをした。仲がいいんだと知った。そして、あんなに優しい表情で話す龍之介を知らない。

私もあの中にいられたら、なんて思った。










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