「それで!?」 「それでって…これで終わりだけど。」 シェイクがキュルキュル鳴る。バイト仲間兼クラスメイトが悶絶したような表情でハンバーガーに食らい付く。正直怖い。 「なんかないの、あんた達!そのスターロードとやら行って、はいバイバイって。有り得ない!」 あんたの声の大きさが有り得ません。ファーストフード店でそんな大きな声で話すなんて、こっちが恥ずかしい。 私は何やら文句垂れる彼女を無視して、あの日を思い返す。 月子ちゃんがすごく勧めてきたスターロードは、綺麗だった。…ような気がする。 と言うのも、正直覚え切れていない。色々ありすぎて、私のキャパオーバー。 ただ龍之介と手を繋いだまま歩いて、眩しいくらいに輝くスターロードとその背中を必死に追っていた。息苦しくて、泣きそうで、忘れられないのに、覚えられない。 「馬鹿だよね、そこで告白しちゃえばいいものを」 他人事だからって、簡単に言い切る彼女に少しばかりイラッときた。フルーリーを食べてやれば、あぁーっとまた大声で騒がれた。 告白なんて、とてもじゃないけど。 もう1つ、龍之介が言うジンクスはなんだったのか。 予想が付かないわけじゃない。龍之介が言いにくそうにして、中でちらほらと見える男女の2人組。つまりはそういうことなんだろう。 龍之介はそれを気にしていたのか。普段は噂や周りに簡単に左右されずに自分を持っている人だ。 だから、あの日の事が分からない。 ポテトを口に運びながら考えいると、月子ちゃんからメールが来る。 内容はスターロードに行ったかどうか。龍之介と行ったと返せば、何故かニヤニヤと笑う絵文字だけが返ってきた。なにこの子、可愛いけど反応困る。 そうだジンクスの事、月子ちゃんに聞けばいいんだ。私は指を動かす。 メールは1分と待たずに返ってくる。 『好きな人とスターロードを歩けば、その恋はうまくいく』 予想は外れていなかった。好きな人か。 私の好きな人は紛れもなく幼なじみで、その幼なじみが好きな人は私じゃない。断言できないが、幼なじみの恋や初恋は叶わない相場が決まっている。そもそも彼に好きな人がいるかどうかすら分からない。 だから文化祭から1週間経った11月のある日、私は龍之介に電話する。時計は23時過ぎを差す。 「龍之介は好きな人、いる?」 真っ暗にした部屋のベッドの上、私は膝を抱えた。 「………いる。」 「そっか、意外だったな。ねぇ、その人は大切?」 「あぁ、なによりもな。」 へぇ、なんて在り来たりな返事は明るい声で。なのに頬に伝うもので、膝の上に抱いたあの猫のぬいぐるみは泣いていた。 ← |