crying cat | ナノ


今日は龍之介達の文化祭だ。私は昨日から私服を念入りにチェックし、バスに乗って来た。
他校の文化祭の盛り上がりが新鮮に感じる。既に校門でどうするべきか困ってしまった。友達連れてくればよかったと後悔をする。龍之介を呼ぼうかとも思ったが、準備に追われているはずだ。そしてなにより…。
私は携帯のメールボックスを開き、ため息をつく。私の学校での文化祭前日のメール以来、龍之介からは連絡が無い。私も文化祭の打ち上げで送ったメールきり、連絡していない。完全に避けられている。私は携帯をぱくりと閉じた。

勇気を振り絞り、中に入った。やっぱりほぼ男子校だけあるなと思う。男子が多いと感じる。文化祭に来ている人は女子もいるけど、比率としては男子が多いだろう。
女子だというだけで珍しいのか宣伝のチラシをやたらもらう。既に手一杯だなぁと思ったら、またチラシが差し出された。


「あれ、名前ちゃんだよね」

「あ…と、確か白鳥くん、だっけ?」

「おおお、マジで!?俺の名前覚えててくれたんだ!超嬉しいなぁ。文化祭来てくれたのかぁ、俺のクラス見てくよな?」

「えーと、白鳥くんのクラスは何をしてるのかな?」

「俺のクラスは星座をモチーフにしたお菓子売り出してるぜ。ほら、宮地いるしな」

「白鳥くん、龍之介と同じクラスだったんだ」


同じクラスなんだ。そう言うとそれは知らなかったんだとちょっと肩を落として残念そうな白鳥くん。知る機会が無かったから仕方ないんだけどね。
白鳥くんはすぐに立ち直りパッと笑顔を作ると来るよねと聞いてくる。そりゃ、龍之介のクラスだしこうして誘われたし、行きたいけど。…心の準備ができてない。いきなり顔を合わせられるか不安だ。
しかし白鳥くんはそんなのはお構い無し。曖昧に頷いただけでよし行こうと歩きだす。これは着いていくべきなんだろう。

こうして見ると、本当に豪華な学校だと感心してしまう。白鳥くんに学校の説明を受けながら龍之介達のクラスに向かった。




「白鳥、お前客の呼び込み係だろ!何仕事をサボっているんだ」

「まぁ宮地、そうカリカリすんなって!周りの客がお前の顔でビビっているよ」


白鳥くんが先に教室に入ったかと思うと、大きな声が響いた。久々に聞く龍之介の声だ。
何だかこうして違う学校に馴染んでいる姿がとても新鮮に感じる。そしてちょっと遠い存在にも感じる。

白鳥くんが教室から出てきたと思えば、背中を押される。


「それに仕事はサボってねぇぞ。ほら、スペシャルな客連れてきたからよ!」

「うわっ、ちょっと白鳥くん!?」

「おまっ…名前!?」


勢いで教室に入ると目の前に仁王立ちしている龍之介。まだ気持ちが追い付いてなかったのに、白鳥くん!

驚いていたのは私だけではなく、向こうも同じだったらしい。驚いて、目を見開いている。
龍之介から文化祭誘っておいて、その反応は無くないか?私は少しむっとしながら久しぶりと言った。向こうはあぁなんて曖昧な返事を返した。何だかぎこちない。というか目線が合わない。
後ろで笑う白鳥くんだけが救いかもしれない瞬間だった。






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