crying cat | ナノ


1日目は丸1日働いた挙げ句、オーダーメイドパフェがなかなかの評判で材料の再調達に引き摺り出されて終了。2日目は舞台の時間ギリギリまで働き、舞台が始まると裏方でバタバタと動いた。舞台は客席も交えたパフォーマンスが好評を得て、学級委員曰く舞台部門最優秀賞狙えるかも、だそうで私はその後の対応に追われた。結論、2日間私の休みが全く無い。


「しょーがないじゃない、うちのクラス2つも抱えてんだから忙しいのよ」

「なんで!?他のみんなは少なくとも1日1度は休憩入ってんじゃん」

「あー、オーダー一気に入るからトッピング作らなきゃ」

「委員長ぉぉ!!」


3日目、学級委員に抗議したら受け流された。だいたいあんた接客係じゃん、なにが作らなきゃよ。
1人ため息を吐いているとクラスメイト兼バイト仲間がこっちへ来いと手招きをしていた。なんなんだと聞けばもうすぐ宮地くんが来る時間だよねと聞いてくる。確か龍之介は午前中には来ると言っていた。頷けば友達の口元がニヤリと弧を画く。
これは…嫌な予感しかしない。さっさと逃げるべく踵を返したが、襟元を捕まれ阻止された。キュッとエプロンが締まって首が窒息する。マジ死ぬから離してくれ。しかし私の願いは友達に届く事がなく、何故か空き教室に引き摺り込まれた。


「隊長、ターゲットを前方に確認しました!」

「ご苦労だ。名字の方はどうだ」

「只今任務を終えました」

「って何なんだこれは!」

「何って、メイド服だが…」


何冷静に答えちゃってんのさ!思わず握った拳は委員長に掴まれ、やんわりと開かれる。そして代わりに握らされたのは会計用の電卓。
これは…龍之介に注文を聞いてこいと。いやいやいや、無理、有り得ない!首を振るも学級委員は手を離さない。


「委員長、こんなの無理だって!恥ずかしさで死ぬし」

「何言ってんのよ、クラスみんなが名前を応援してるんだ。この計画を、みんなの気持ちを無駄にする気!?」


その言葉にどきりと胸が鳴る。周りを見渡すとその場にいたクラスメイトが私を見ていた。
頑張れ、と言ってくれたり、手を振ってたり、拳を握ってたり…

みんな、みんな私を応援していた。幼なじみの一線を越える勇気が無かった私の背中を押してくれている。
なんて贅沢者なんだろう。こんなに、クラスのみんなにこの個人的な恋路を応援されるなんて私だけだろう。

感動して、少し涙が出そうになった。頷いて頑張る、と言うと周りが私とハイタッチしてくれた。そして注文を受け付けているカウンターに背中を押され出した。









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