crying cat | ナノ


「よぉーし、みんな遅くまでお疲れ!明日からいよいよ本番だ、打ち上げに焼き肉行きたい奴は張り切っていこうぜ!!」

「「「おーっ!!」」」


やっと終わった。文化祭前日、2つも出し物をやるうちのクラスは当然の事ながら遅くまで縺れ夜8時、学級委員が終了の合図をかけた。うちのクラスは最優秀賞が取れたら焼き肉で打ち上げをやるらしく、みんな本気でかかっている。それにしてもうちの学級委員は女なのに男前だ。
周りより若干温度が低い私はため息を吐いた。やれやれ、やっと帰れるわ。


「それと!」


まだ続くんかい。思わずがくっと力が抜けた。何故か文化祭の資料を丸めてマイクのように持っている学級委員が私を指差す。…嫌な予感しかない。


「名字名前告白プロデュース企画もラスト3日目が勝負だ!みんな協力すっぞ」

「名前頑張れよ、あのイケメン物にしなさいよ」

「そうだぞ、クラスみんながお前を応援してるんだ」

「…はは、私ってば超愛されてるー」

「仲良いよね、うちのクラス。ま、私も面白い展開期待してるから」


クラスメイト兼バイト仲間が緩く肩を叩いてくる。元はお前のせいだと自覚してくれ。そんな賑やかなうちのクラスは異様な雰囲気で解散した。

龍之介はさっき学級委員が言ったように最終日の3日目に来るらしい。1日目は平日の上に校内だけだから来れないので2日目、3日目になるのだが、2日目の土曜日は部活と龍之介も文化祭準備らしく、3日目に来ることになった。それまでに告白する決心を固めてこいと言われたが、そんなの無茶だ。
なんでこんなことになっちゃったのかな…。夜空を見ながらぼちぼち帰っているとメールの着信。携帯を開くと以前アドレスを交換した橋本くんだった。あれからは時々メールしたりしている。そうだ、もとは橋本くんに呼び出されたのがきっかけってのもあるんだ。私は適当に返信すると携帯を閉じた。

龍之介に会いたいな…。夜空に浮かぶ星を見ていたら思わず呟いていた。
龍之介は、夜久さんが好きなんだろうか。本当は告白する勇気なんて無かった。ただ、文化祭に呼んだのは頑張って考えたメニューを食べてほしくて…


『お前のパフェを期待している。』


龍之介からのメールを開く。
そうだよ、特別な思いを込めて作ったパフェだから、龍之介に美味しいって言ってもらいたいから、文化祭に誘ったんじゃないか。告白とか、そんなんじゃない。みんなには悪いけど、私は告白の前にやらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。
携帯を閉じて私は走りだした。明日からの文化祭、目一杯頑張ろう。







- ナノ -