Monochro Campus | ナノ


06


写真の中の私は若干若い。よくよく考えたら服のサイズも少し大きくなっている。否、私が縮んでいる?だらりと少し長い袖が物語っている。元から大した大きさが無かった胸も小さくなっている。でもこれは少し楽になったかもしれない。
私自身に何が起きているか、分からない。一気に老ける病気はあるけど、若返るなんて普通に有り得ない。どういうことだ


「星詠み科を選ぶんだからそれなりの力を持って編入したんだろう?」


ストールが他の書類を引っ張り出しながら私に言う。星詠みなんて力、私は持っていない。だいたい私は星詠みという単語は友達に借りたゲームで覚えたものだ。本当にそんな力があってたまるか…。ゲー、ム?

その単語が過った瞬間、ゾッとした。まさか、と現実逃避をしてみるも一度当てはまってしまった記憶のピースはなかなか崩れなかった。


「名字?どうしたんだ」

「…名前、聞いてもいいですか?」

「俺のか?星月琥太郎だが」

「じゃあ、あの銀髪…」

「不知火か?不知火一樹、あいつは此処の生徒会長だ」



私の高校時代の友達に、ゲームが大好きな子がいた。根はいい子なんだけど、なんというか…ゲームに関しては熱が入っていたというか…。私にも面白いからやってみろとよく貸してくれたものだ。ジャンルも様々だったが、残念ながらそこまで興味が湧かなかった私は、だいたいのゲームを殆どクリアせずに返したけど…。たくさん借りた中で季節ごとに4シリーズもあれば印象に残るものだってある。更に恋愛シュミレーションゲームのキャラは濃いものだ。無意識に覚えたらしい。


そう、ここはいつか私が不本意に借りたゲームの世界によく似ている。


「名字?大丈夫か」

「…はは。そんな非現実な事、誰が信じるか」


ストールが不思議そうに見てくるけど関係ない。
脳内で出た結論はあまりにも非現実で、信じがたいものだった。私は自分のその目で見たものしか信じない。神や霊、奇跡だって実際に私の目で確認できない物は存在しないと考えている。別世界へのトリップも例外ではない。

その考えを否定する為に私はバックから携帯を出して開いた。友達に連絡すればいい。別世界でないと証明してやる。しかし、画面の左上に表示されている電波は圏外。試しに電話帳の一番上にある人に電話をかけると、ツーツーという無機質な返答。
これでほぼ確定した。目で見たものしか信じない、けど目の当たりにして受け入れるしかない。


私は別世界に来てしまった、と。






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