Monochro Campus | ナノ


05


「星月先生ー。お、仕事してる」

「あっれー、本当だ。」

「おい、俺がいつも仕事してないみたいに言うな。しかも不知火、なんだその俵は」

「あぁ…さっき拾ったんですけど、足を酷くやってるみたいなので診てもらえませんか?」

「なんで俺が部外者を診なきゃいけないんだ…。ほら、ここに降ろせ」


一連のやり取りを聞いた後、私はどこかに降ろされた。辺りを見ればカーテンとベッド。治療をするから保健室に決まっている。ベッドが広い、とぼんやり思っていると顔を覗き込まれた。
鮮やかなエメラルドグリーンの結った髪、ストール、この人もどこかで見たことある気がした。銀髪といい、このストールといい…なんでこんなに引っ掛かるんだ。

ストールがどこかへ行ってなにやらごそごそし出した。目で追うと机の上の山が目に入った。汚な…。思わず呟くと銀髪が苦笑した。いつもああなんだよね、と変態が解説をくれた。不便だと感じないのか。

それよりもネクタイを返さないといけない事を思い出して銀髪を呼んだ。しかし、銀髪がそれを有ろうことか無視した。顎に手を当て、考え込んでいる。この銀髪め、話を聞け。もう一回呼ぼうとしたら銀髪は変態の名前を呼んでベッドのカーテンから出た。


「じゃ、星月先生後は頼みます。」

「おい、銀髪!ネクタ…」

「それ、次会った時に返してくれればいいわ。んじゃ、また会おうな、名前」

「!?」


そう言うとヒラヒラと手を振り出ていく銀髪。驚きで引き止めることが出来なかった。…なんで銀髪が私の名前を知っているんだ。お互いまだ名前を言っていなかったはず。

そして、そっちに気を取られて忘れていたが…。何が次会った時に、だ!二度と会うか、あんな横暴。イラっとした感情を舌打ちするとストールが女の子が舌打ちするなと言いながらカーテンの中に入って来た。


「お前、名前って言うのか」

「だからなんですか」

「ふむ、どこかで聞いた名前だな………」


ストールは黙り込み、ネクタイを外していった。ハンカチも返さないといけないことに気付いた。畜生、嫌でもあいつに会わなきゃいけないじゃないか。まぁいいか、このストールに任せれば。湿布が貼られ、包帯を巻かれる足を見ながら考えた。
ストールの治療の手際は良かった。治療が終わった足を眺めながら包帯、綺麗に巻かれてるだなんて感心をしていた。


「思い出した。お前今度星詠み科に編入する名字名前だろ」


ストールが思い出したように言った。
ちょっと待てをかけたい。編入!?しかも星詠み科とかなんなんだ。誰もこんなとんでもない学校受けてないし。その前に私は高校を卒業して大学の進学先も決まっている。明らかに大学ではないここに入るわけが無い。

唖然とする私にストールは何かの紙を探しだし、押し付けた。そこに書かれていたのは、入学に必要だと思われる書類のコピーに顔写真付きで載っている私の名前、そして『星月学園』の文字だった。






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