46 連れて来られたのは体育館倉庫、さっきの事故の現場だ。勿論、崩れた器具達は元の位置に戻したし、血も少量だったから着いているなんてことはない。 何の事情も知らない一樹は私がここで雪崩に遭っただなんて知らないはずだ。でもこうしてここにいるのは、恐らく星詠みだ。 「こうして見ると、散らかってるな」 「………」 「1人でここを整理しようと思ったんだろ?」 一樹はニヤリとした笑みで聞いてきた。ウザイ、何を根拠に。 「ここで器具が崩れて巻き込まれる生徒を視たんだろ?それで先に整理して防ごうとしたが、結果巻き込まれたのがお前だったと」 「どこにその根拠があるって言うのさ」 「俺も視えてたら、そうしたからな」 理屈が通らない。私と一樹は違うそう呟くと、そうだなと返事をしながらここ整理するぞと腕まくりをする一樹。私も強制参加か。睨む視線も無視。 こうして体育館倉庫の大掃除が始まった。 俺も視えてたら、そうした…ね。 こいつは自分の身を顧みずに危険が迫っている人を助けるだろう。私はこの世界の人にそこまでの思い入れは無い。故にそんな無茶はしない。 今回はたまたま、だ。 「次から何か視えたら俺に言え、名前1人だと危険が多い」 ほら、こいつはそういう奴だ。編入してからの数日で嫌でも知った。でも私はそこまで正義感がある人間じゃない。寧ろ皆無だ。 コーンをしまい、ため息をつく。なんでこんめんどくさい作業をしなきゃならないんだ。 一樹も普段真面目な奴とは言えないが…こういう時ばかりはかなり真剣だ。 『この学校の生徒は俺が守ってやる』 以前こいつはそんな事言っていた。随分スケールのでかい奴だ。 『例え編入して 間もない奴でもな』 言わないけど一樹は責任感を感じてるのかもしれない。私が怪我した事に対して。守ってもらおうなんざ思ってもないのに。 次から視えたら言うように言ったのは、今回みたいな怪我をなくすためか。そのために自分が怪我しても構わないなんて、滑稽な話だ。 まぁ言うのめんどくさいし、今後視えたからといって言う時なんて来ないだろうと思う。 最後にバドミントンのシャトルを片付けて、体育館倉庫の大掃除は終了した。初めよりスッキリしたここは、もう雪崩なんて起きないだろう。 普段動かない分、こうして働くと異様に疲れる。欠伸をしながら一樹を見れば、何故か笑っている。1人で笑うとか気持ち悪い。そう思って見てれば頭に手が置かれた。 サンキューな、なんて。子供扱いは嫌いだ、そう思いながら私は無言で頭に置かれた手を払い退けた。 ← |